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第94章 配属と移動
敬礼を解いた瞬間、広場の両列は左右に分かれ、各派遣先の担当士官が名簿を読み上げ始めた。
「古村大尉——横須賀教育隊、電子戦課程へ。担当は杉浦二佐」
深紺の制服に身を包んだ古村は、一礼して列を離れた。
背後では、同じく大和乗員たちがそれぞれの現代艦へ向かって歩き出している。
「まや」CIC、「かが」飛行甲板、「せいりゅう」潜水管制室……
灰色の艦影と、その甲板上で動く現代自衛官たちの姿が視界に重なった。
杉浦二佐は短く会釈し、古村に歩み寄った。
「これから模擬CIC室に向かいます。現代戦の“戦場”をご覧いただきます」
「戦場……か」
古村の声は低かった。
歩を進めながら、彼は艦橋や測距儀ではなく、建物の奥深くにあるという“戦場”のイメージが湧かずにいた。
通路の壁には、衛星写真やレーダー画面のパネルが並び、
そこに映る海は、彼の知る波のうねりも陽光の反射も持たなかった。
代わりに、数字と記号が海を埋め尽くしている。
「ここがCIC——戦闘情報センターです」
厚い扉が開き、冷たい空調と電子機器の匂いが漂う部屋に足を踏み入れた。