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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン23

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第180章 ◆《AIヒストリーライブラリー退出シーン》


(ホログラムに“体験セッション第1回:終了”の表示。

脳の奥でまだ波の振動が残っているような、奇妙な余韻が部屋に漂っている。)


■1.強制ログアウトの瞬間


(最後に見ていた映像――

【20:荒天訓練】の“巨艦が荒海を蹴り上げた瞬間”が、

画面の端からゆっくりフェードアウトする。)


AIミナカタ

『心拍および前頭葉負荷を検知。

ガイドラインにより、本日のAIヒストリー体験はここまでです。

次回セッションは24時間後に再開されます。』


野本(思わず手を伸ばす)

「えっ、ちょっと……もう終わり……?

だって今、ちょうど新兵が“海の本気”に気づいたところで……!」


富山

「そうだよ……“旋回訓練”と“夜の艦橋”めっちゃ面白くなってきたのに……。

ていうか、脳のどこが疲れてんのよ……私まだ全然見れるわ。」


亀山(現実的な声)

「“見れるわ”って言っても、BMI接続だと脳みそに負荷蓄積するのよ。

部長なんて途中で呼吸浅くなってたでしょ?」


小宮部長(苦笑しながら)

「……波が強すぎて、“船酔い”じゃなくて“脳酔い”したのよ……

あの揺れ方リアルすぎるんだけど……。」


橋本副部長

「だって主観データそのまんまなんだから当然だよ。

アーベント新兵が階段で吹っ飛んだ瞬間、僕も身体浮いたし。」


山田(腕をさすりながら)

「俺、絶対あれ明日になっても筋肉痛残るわ……。」


■2.“もっと見たい”と“見られない”の葛藤


重子(名残惜しそうに端末を閉じながら)

「でも……

あの“北海夕景”だけでも胸が締め付けられましたね。

あの夕日、絶対フラグでしょ。

これから地獄が来るってやつ……。」


富山(目を輝かせながら)

「でしょ!?

“今見てる世界は、これから失う世界”って兵曹が言った瞬間、

私泣くかと思った……!」


亀山(口をすぼめて)

「それより私は艦長の訓示がヤバかったわ。

あの声の落ち着きよ……

“過信しない”ってああいう意味なのね……。」


野本(控えめに)

「……あのまま続けたら、

きっと“フッド戦”まで行っちゃいますよね。

だからガイドラインが止めたのかな……。」


■3.AIヒストリーの“危険性”を理解する時間


(表示パネルに、AIヒストリーの注意事項が表示される。)


小宮部長(読み上げる)

「“長編戦闘系ヒストリーは、

情動刺激が強すぎるため連続視聴は推奨しません。

回復セッションを挟んでください”……だって。」


富山

「いや、あなたたちがあんなリアルなの作るからでしょAI……。

あれ普通に映画より精神削れるよ。」


橋本副部長

「特に荒天訓練は最悪だよ。

船体が傾いた瞬間、

後頭葉に“ほぼ落下”の感覚入ってきたし……。」


山田

「海の匂いまでしたよな……

潮と油が混ざったあの感じ。」


重子

「感覚まで再現されてるなら、

そりゃ休憩必要ですよ……。

次はもっとすごそうですし。」


亀山

「次?……ああ、【高速旋回訓練】の続きね。」


■4.名残惜しい退出


(ホログラムが淡く消えていく。

ビスマルクの巨大な影が、霧の奥へ沈むように。)


野本

「……はぁ……続き……見たい……。」


富山

「帰りたくない……というか、

もう“船の中”から戻りたくない……。」


小宮部長(苦笑)

「わかるけど、

あんたたち睡眠とらないと次のセッションで倒れるわよ?」


橋本副部長

「24時間後には【プリンツ・オイゲン合流】が始まるのか……

絶対やばいじゃん……!」


山田

「訓練終わって、

艦長が“これより作戦行動に移る”って言ったとこで終わりだもんな……。」


重子

「続きは……“北大西洋”ですよ……。」

(声が震える)


亀山

「ほら、帰るよ。

その“震え”のまま続き見たら、

次はたぶん泣くから。」


■5.出口のドアが閉まるとき


(部屋のドアが自動で開き、廊下に冷たい夜の空気が流れ込む。)


野本(振り返りながら)

「……次のセッションで、

リンデマン艦長の“作戦前夜”が始まるんですよね……。」


ミナカタAI(壁面の端末から)

『はい。次回は

――【プリンツ・オイゲンとの隊列同期】

――【戦隊通信訓練】

――【北方海域への針路変更】

から開始します。』


富山(震えるような興奮)

「うわ……いよいよ“あれ”じゃん……

“デンマーク海峡”までのカウントダウンじゃん……!」


小宮部長

「ほら、閉めるよ。

このままじゃ全員、食事も忘れる。」


(ドアがゆっくり閉まり、

ビスマルクの荒海の記憶だけが

彼らの身体に残ったまま――

静かな廊下に、乾いた靴音だけが響き始める。)


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