第163章 損傷したB-29 欧州空域を脱出して基地へ帰還
■構成
① 損傷したB-29機長(爆撃後・右側操縦系損傷)
② Bf 109 / Fw 190 二波迎撃隊(ドイツ側追加戦闘機)
③ ドイツ地上レーダー管制官(防空網の統制)
全てを同時刻進行、秒単位で同期しながら描写する。
■《時刻 08:17:40》
爆撃直後:損傷機の分離
① B-29機長
第二エンジン(#2)は正常だが、
第三エンジン(#3)は弾片でオイルラインを損傷している。
「温度上昇……このままじゃ焼き付くぞ!」
副操縦士(右腕に裂傷)
「機長、3番止めるべきです!」
私は短くうなずき、
#3プロペラをフェザーに入れる。
ゴウン……ゴォォ……
回転が停止し、プロペラは“細く”風を切り始めた。
→ 左右の出力バランスが崩れ、機体は右へ傾く。
→ 右の補助翼を強く当てて水平を維持。
爆撃手が叫ぶ。
「僚機が私たちを待っていますが……どうします?」
「……我々だけ南へ迂回する。
高度は維持できる限り維持する。」
私は酸素マスク越しに短く言った。
② Bf 109・Fw 190 第二波編隊
地上からの指示で、
次の迎撃隊が連続発進している。
編隊構成:
•Bf 109 G-14 × 4機(高高度上昇性能)
•Fw 190 A-8 × 6機(ロケット・30mm主力)
リーダーのFw190パイロットが無線を開く。
「第1波が損傷を与えた。
残存B-29を撃ち落せ。
高度は約8,700m。
ロケットBR21準備!」
③ 地上レーダー管制官
スクリーンに出ている巨大な反応の一つが、
爆撃後に速度低下・高度低下している。
「……損傷機が南へ逸脱。
単独で離脱を試みている。」
指揮官
「単独機が最も落としやすい。
第2波はそれを優先しろ!」
■《時刻 08:19:20》
高度維持不能:B-29は 29,000ft → 26,500ft へ降下
① B-29機長
計器が示す高度は
29,000ft → 27,500 → 26,500ft。
エンジン出力が足りない。
「……落ちるな。」
私は操縦桿を軽く押し、
降下しながら水平に保つ。
通信士が後方からの音を拾う。
「敵戦闘機複数、急速接近!」
後部銃手
「6時方向下!
Fw190だ!」
② Fw190 × 6
Fw190は高高度では力不足だが、
B-29の高度が落ちてくれば攻撃できる。
リーダー
「距離2km、過負荷に注意して高度を合わせろ。
BR21ロケット発射準備!」
後席にロケット2発×6機で
12発のBR21空対空ロケットがある。
これは“ばら撒き式対重爆ロケット”で、
命中すれば一発で重爆の主翼を折り得る。
③ ドイツ管制官
新たな報告が入る。
「損傷B-29、高度下降中につき、
Fw190が射程に入る見込み。」
司令部
「第2防空帯の対空砲も準備。
飛行場群の上空を通過する場合は迎撃を継続せよ。」
■《時刻 08:20:05》
ロケットBR21による“第一撃”
① B-29後部銃座
後部銃手
「敵が編隊を組んでいる!
ロケットだ、注意!!」
私
「ロケット?
Fw190がこんな高度で使うのか……!」
後部銃手
「距離1500m……来るぞ!!」
ズボォォォォ!!
(BR21ロケットが6方向に白煙を残して発射)
② Fw190側
発射指示。
「BR21 —— 放て!!」
ズドォンッ! ズドンッ!
全機がロケットをばら撒き、
巨大な爆煙の“壁”を作る。
BR21の特徴:
•速度は遅い
•誘導なし
•だが接触すれば破壊力は絶大
•「回避させて後続が撃つ」目的で使われる
③ 地上レーダー管制官
空域に強い反射ノイズが発生。
「第2波がロケットを発射。
損傷機は回避行動を取っている!」
① B-29(ロケット回避)
副操縦士
「回避を!!」
しかしB-29は機敏に避けられない。
私は左へ機首をやや押し込み、
最小限の機動でロケット帯を“抜ける”。
後部で爆炎。
ゴォォン!!
左水平尾翼に衝撃。
機体が跳ねる。
後部銃手
「左水平尾翼に破片!
構造材が吹き飛んだ!」
私は歯を噛む。
「まだ飛べる……次が来るぞ。」
■《時刻 08:21:40》
第二波:Bf 109 G-14の“最高高度・高速正面攻撃”
① Bf 109 G-14(上空8,700m)
109隊は高度優位を保っている。
リーダー
「Fw190がロケットを打ち終えた。
我々が畳み掛ける。
撃墜は正面突破で決める!!」
DB605ASMエンジンは高高度向け。
わずかにB-29の上方へ出て、
落下しながらヘッドオン攻撃へ移行する。
② B-29機長
前方銃座
「正面上! 109が4機!!」
私は叫ぶ。
「引くな! そのまま……
射角が合ったら撃ち落とせ!!」
前方12.7mm銃座が火を噴く。
バババババッ!
③ Bf109
風防に火線が走る。
「クソッ、撃ってくるぞ……!」
距離400m。
パイロットがMG151/20を全力で撃ち込む。
バシュンッ! バシュシュンッ!!
20mm榴弾がB-29の左エンジンナセル付近に命中。
① B-29
左翼から黒煙。
副操縦士
「左翼燃料タンクに被弾!!
圧力低下!!」
私は冷静に返す。
「火災はないか?」
「……まだ無い!」
後部銃手
「一機落とした!!
敵109撃墜!!」
だが残り三機がまだ来る。
■《時刻 08:24:10》
“決死の引き離し”:B-29、高度をさらに捨てて脱出
① B-29
高度は
26,500ft → 24,000 → 22,500 → 20,000ft。
私は決める。
「やむを得ん……
高度1万フィートまで降下して雲に逃げる!」
高高度のままでは
Bf109に何度でもヘッドオンを食らう。
② Fw190
Fw190隊はB-29の降下を見て、
高度を合わせつつ追う。
リーダー
「低高度に逃げるつもりだ!
エンジン性能はこちらが上だ、追い詰めろ!!」
Fw190は低〜中高度で本領発揮する。
③ 地上レーダー管制官
「敵重爆、急降下中!
雲層へ逃げ込むつもりだ!」
司令部
「迎撃を続けろ。
地上対空砲の射程にも入る!」
■《時刻 08:26:00》
雲層突入(高度 10,000ft)
① B-29
視界が完全に白くなる。
「……よし、雲に入った。」
通信士
「追撃音、聞こえません!
撒いたか……?」
私は静かに言う。
「甘く見るな。
雲の下は、対空砲火の巣だ。」
② Fw190 & Bf109
雲に突入すると一気に視界が失われる。
Fw190リーダー
「雲の中では重爆の後部銃座に食われる。
追撃中止、雲上に戻る!」
こうして空の追撃は途切れる。
③ ドイツ地上レーダー管制官
「敵機、雲の中へ。
追撃機は視認不能。」
司令部
「では対空砲火に任せる。
第2防空帯、全砲発砲!」
■《時刻 08:28:30》
地上対空砲火ゾーン突入(Flak 88mm, 128mm)
① B-29
雲の下から黒い球が次々に浮かび上がる。
ボフッ! ボフッ!!
黒い破片が風防を叩く。
副操縦士
「88mm高射が密集しています!!」
私は迷わず機体を左へ振り、
「ジグザグ回避だ!!
速度を落とすな!!」
B-29は損傷で応答が重い。
しかし“重いからこそ揺れにくい”とも言える。
② ドイツ地上Flak隊
対空砲手
「損傷した重爆が低高度へ降りてくる!
射角合わせ!!」
観測手
「先行する雲で誤差が出る、
しかし奴は直進するしかない!!」
88mmが連続発射。
大空に黒煙が咲く。
③ ドイツレーダー
「対空砲火がB-29後方を捉えている。
損傷が広がれば墜落の可能性。」
■《時刻 08:33:50》
Flak網突破 → 北海へ脱出
① B-29
大きく揺れた。
後部銃手
「右主翼前縁に被弾!!
損傷、しかし構造にはまだ影響なし!」
煙を吐きながらも、
我々は海岸線へ出る。
副操縦士
「海だ!!
陸地を抜けました!!」
私は深く息を吐く。
「……ここからは燃料との戦いだ。」
残燃料は大幅に減少。
エンジン2発が不安定。
② Fw190 / Bf109
雲上を旋回しているが、
すでにB-29の反応が無い。
リーダー
「海に出られたか。
これ以上の追撃は不可能だ。」
③ レーダー管制官
「損傷したB-29、海岸線を突破。
消失しました。」
司令部
「……落とし損ねたか。」
■《時刻 09:41:10》
イギリス本土へ帰還
① B-29
基地の無線塔を感知。
左翼は裂け、尾翼は弾痕だらけ、
エンジン#3は死んだまま、#1も不安定。
副操縦士
「脚、出ますか……?」
「出すしかない。」
油圧を使い脚を下ろす。
「……よし。
あとは機体が持つかどうかだ。」
ランディングギアが震えながら出てくる。
滑走路が見える。
私は叫ぶ。
「生きて帰るぞ!!
フレアを炊け!!」
着陸。
ガガガガガッ!!
右へ傾いたまま、
主脚が滑走路を削り——
——停止。
生存。
■【総括:帰還戦の勝敗要因】
◎1. 第2波のFw190ロケットがB-29の機動を決定的に制限
ロケットBR21は命中せずとも
“回避させ、構造損傷を与え、次の正面攻撃に繋げる”効果がある。
→ 左水平尾翼損傷が大きな影響。
◎2. 最終的な決め手は高度捨てによる“雲への逃げ込み”
•高度3万ftでは何度も正面攻撃を食らう
•雲へ逃げることで視覚追尾を断つ
•その代わりFlak地帯を通らなければならない
→ 高リスクだが、これしか生き残る方法はない。
◎3. Flak 88mmの精度と密度が最大の恐怖
高度1万ftでの対空砲火は、
戦闘機迎撃よりも圧倒的に危険。
◎4. B-29の生存要因
•構造強度の高さ
•4発エンジンの冗長性
•多銃座の防御火力
•雲層を利用した判断




