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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン23

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第140章 火力集中と戦術革命:大砲と銃が“戦場の形そのもの”を変えた






TACTICUS-SIM の床が震え、

視界が一気に開ける。

次の瞬間、キャラクターたちは、

霧のかかった巨大な平野に立っていた。


遠くの丘には大砲群。

手前には整然と並ぶ歩兵の列。

黒煙の向こうで、太鼓が鳴っている。


野田

「な、なんか“軍隊の教科書”みたいな風景……!」


南條

「ええ。ここは“戦争が科学化した瞬間の戦場”です。

では講義を始めましょう。」


■【講義1】


“火力集中”という概念が誕生した瞬間


南條

「中世までの戦争は、

“個の武勇”や“騎士の突撃”が中心でした。

しかし近世後期、

大砲とマスケット銃が――

『敵の前線そのものを破壊できる火力』

を作り出すようになります。」


ホログラムに、大砲の射線が表示される。


南條

「従来の戦争は“接触戦”でした。

しかし火器が揃うと、

接触前に勝敗が決まる時代になります。」


富沢

「それって……殴り合う前に、

撃ち合いで決まるってことですか?」


南條

「はい。

『火力の密度が高いほど強い』という、

近代戦の大原則がここで生まれた。」


■【講義2】


大砲が“戦場の地形”すら書き換えた


南條

「大砲の威力は、

単に兵士を倒すだけではありません。

戦場の地形に“穴”を作り、

隊形を崩壊させるのです。」


ドーンッ。

丘から発射された砲弾が地面で破裂し、

土煙が舞う。


亀田

「ひぃ……! あ、あそこだけ地形がへこんでる……!」


南條

「これが“陣形破壊”です。

大砲は、


・密集隊形を破壊

・突破口を作る

・城壁を崩壊させる

・砲兵陣地を制圧する


という複数の役割を担いました。」


野田

「つまり……大砲一門で“場の支配者”になれる……?」


南條

「おっしゃる通りです。」


■【講義3】


歩兵は“ライン”から“カラム”へ進化した


ホログラムに、18世紀歩兵の3列横隊が出る。


南條

「近世歩兵は“横3列のライン”で並び、

一斉射撃を行うのが基本でした。」


ところが続いて表示されるのは、

縦に深く並んだフランス軍“カラム(縦隊)”。


南條

「革命期フランス軍は、

縦隊カラムで突撃する戦術を開発しました。


これは、

・少ない訓練でも

・素早く前進でき

・突破力が高い。


その代わり、

横幅が狭く、射撃は弱い。」


富沢

「じゃあどうやって勝つんです?」


南條

「答えは――

**『カラムで近づき、ラインで撃つ』

という変形戦術です。」


シュンッ、と部隊の隊形が切り替わる。


南條

「接近までは縦隊。

敵前に来たら横隊に広がって一斉射撃。

これが“革命軍の柔軟戦術”です。」


■【講義4】


ナポレオンの“3兵科合成”戦術:歩兵・騎兵・砲兵が完全統合


遠くの丘にナポレオン風のシルエットが浮かぶ。


南條

「ナポレオン戦争で最大の革新は――

歩兵・騎兵・砲兵の三位一体運用です。」


●歩兵


→ 砲兵の前進を守る

→ 敵歩兵の隊形を押し潰す


●砲兵


→ 突破口を砲撃で作る

→ 近接戦直前まで弾幕を張る


●騎兵


→ 敵が混乱した瞬間に突撃して崩壊させる


南條

「それまでの戦いは“兵科ごと”でした。

しかしナポレオンは――

『戦場全体を1つの機械』のように動かした。」


野田

「えっ……戦争を“システム”として扱った……?」


南條

「はい。

それが近代軍事の始まりです。」


■【講義5】


フランスの“機動砲兵”が戦場を制圧した理由


ホログラムに、馬で牽引される軽榴弾砲が走る。


南條

「革命軍は、砲兵に“軽量化”と“高速移動”を与えました。

これが 機動砲兵フライング・アーティラリー です。」


亀田

「走ってる! 砲兵が走ってる!」


南條

「陣地転換が速い砲兵は、

どこでも火力優勢を作れる。


これが、ナポレオン軍の勝因の一つです。」


■【講義6】


“士気”を科学化した時代:戦術の前提が変わった


南條

「ここで重要なのは、

火力が高まるほど“恐怖も増える”という点です。


そこでナポレオンは、

“士気維持”をシステムとして設計しました。」


●士気維持戦術


・太鼓のリズム

・隊旗(鷲章旗)

・指揮官が前線で声を上げる

・突撃のタイミングを統一

・損害が出ても崩れない“集団心理”の訓練


富沢

「士気も“工学”なんですね……」


南條

「ええ。

近代戦は“物理火力×心理火力”の積です。」


■【講義7】


消防士のような“軍隊運用” ― どこで崩れたかを瞬間的に修復


南條

「戦場の部隊は、

常にどこかで“穴”が開きます。」


ホログラムでは、

砲兵の一撃で歩兵の隊列が崩れかける。


南條

「ナポレオン軍の強さは、

その穴へ即座に予備兵を送りこんで“塞ぐ”速度。

こうした“縦深予備”の概念は、

後のドイツ参謀本部にも受け継がれます。」


野田

「戦場が巨大な機械みたいに動いてる……」


南條

「その認識で正しい。」


■【質疑応答】


富沢

「ナポレオン軍って、

結局どこが一番革新的なんですか?」


南條

「“兵科が独立していない”点ですね。

歩兵と砲兵と騎兵が、

一体となって突破・制圧・追撃を行う。」


野田

「現代の“統合軍”の元祖……?」


南條

「そう言っていい。

陸海空の統合作戦の源流でもあります。」


亀田

「大砲って、やっぱりそんなに強かったんですか?」


南條

「はい。

特にナポレオンの“グラン・バッテリー”(大砲集中運用)は、

敵前線を10分で瓦解させました。」


野田

「10分で……!?」


南條

「火力革命とはそういうものです。」


■【章まとめ】

1.火力集中が“接触前決戦”の時代を開いた

2.大砲は地形と隊形を破壊する

3.縦隊カラムの機動と横隊ラインの火力が統合

4.歩兵・騎兵・砲兵が“1つのシステム”として運用された

5.機動砲兵が局地的火力優勢を連続的に作り出した

6.士気と心理が戦術の一部として管理された

7.戦場運用は巨大な“戦争機械”へ進化


南條

「さて、第7章では――

産業革命が兵器にもたらした“爆発的変化”

を扱います。

あなたが知っている“近代戦争”が、ここで形になります。」


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