第90章 都内・オフィスビルの休憩室 D-140
(昼休み)
佐藤(営業)
「おい、見た? 昨夜のニュース。尖閣のあたりでまた中国の船と海保がぶつかりかけたって」
田中(総務)
「うん…でもあれ、前からちょこちょこやってるやつでしょ? なんか映像も同じようなのばっかじゃない?」
佐藤
「いや、今度は与那国とか宮古でも海警局の船が増えてるらしいよ。しかも武装っぽいやつ」
山本(経理)
「へぇ…でも結局、漁船追い回してるだけじゃないの? 政治家が危機感あおって予算取るパターンでしょ」
佐藤
「それはそうかもしれんけどさ…ほら、この前の東京港のコンテナヤードの火事、あれも“事故”って言ってるけど、本当かね」
田中
「港の火事と尖閣関係ある?(笑)」
山本
「ほら出た陰謀論。まあでも、週刊誌で台湾有事とか煽ってるよな。表紙が戦闘機とかミサイルとか…」
佐藤
「いや、俺は別に信じてるわけじゃないけど、こういうニュースが立て続けに出ると、なんかきな臭いって思わない?」
田中
「まぁ…確かに最近ニュースが物騒だなとは思う。でもどうせ日本は巻き込まれないっしょ」
山本
「そうそう。俺らに関係あるのは物価上がるかどうかだけだよ」
——
休憩室のテレビは、ちょうど昼のニュースで「尖閣諸島周辺で中国海警局船と海上保安庁巡視船が接近」と報じていたが、
誰も最後まで見ずにチャンネルをバラエティ番組に変えた。