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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン23

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3232/3469

第130章 火薬革命 ――「筋力の時代」から「化学エネルギーの時代」へ




(TACTICUS-SIM室。

前章の中世戦場から生還した野田たちはヘロヘロのまま座っている。)


南條(淡々)

「さて、今日は“火薬革命”を扱います。

人類史で三度しか起きていない“戦争の物理法則の転換”の一つです。」


野田

「先生……今日はなにが私たちをくすぐったり痒くしたり臭くしたりするんですか……?」


富沢

「先に言ってくれれば心の準備できるのに……」


南條

「今回は“爆発の風圧”がくすぐったさに変換されます。」


全員

「いや絶対怖いやつ!!!!」


──────────────────────────


■第1節 “火薬”という魔法ではなく“物理の革命”


南條

「まず結論から言います。

火薬革命とは、

**『戦争の主役が人間から化学反応に交代した瞬間』**です。」


ホワイトボードに、古代・中世のエネルギー源が書かれる:

•人間の腕力

•馬の筋力

•機械(てこの原理)

•弓の張力

•重力(投石機)


南條

「ここまではすべて生物学的限界の範囲です。

どれほど鍛えても――

弓の張力はせいぜい80〜100ポンド。

馬の速度は40〜60km/h。

人間の筋力は“器具の補助”が限界。


しかし火薬は、

**1000度の熱と膨張気体を一瞬で発生させる“化学爆轟”**を用いる。

これは“生物の体”では到底出せない力です。」


野田

「つまり、私たちがいくら頑張っても爆発には勝てない……?」


南條

「はい。生物は爆発には勝てません。」


富沢

「淡々と言わないで!!」


──────────────────────────


■第2節 VR実習:初期火縄銃 ― 爆轟の衝撃


(室内が暗くなり、全員の手に

**16世紀の火縄銃マッチロック**が装着される。)


AIアナウンス

《発射時、風圧が“くすぐったさ”に変換されます。》


亀田

「その仕様やめようよ!!」


南條

「では装填。

火縄銃の弱点を3つ体験してください。

①装填が遅い

②雨に弱い

③反動が強い」


南條の合図とともに、

火縄がパチッと火皿の火薬に落ち――


――ドゴンッ!!!


全員の腹と脇腹が一斉に“くすぐったさ衝撃”を受ける。


野田

「ひゃああああああ!!!!!!」

(地面をじたばた)


富沢

「くすぐったいくすぐったい無理無理無理!!!」

(変な踊りになる)


亀田

「笑わせないで! これ私ほんとダメなの!!」


南條(淡々)

「火縄銃の平均反動は50〜70Nです。

筋力が弱い者は、反動で“姿勢を崩し、次弾が遅れる”。

つまり火縄銃は“個人差が大きい武器”でした。」


部長

「こんなん戦場で使えないでしょ……!」


南條

「使ったんです。それが近世です。」


──────────────────────────


■第3節 城を滅ぼす破壊の魔力 ― 大砲の衝撃


シーンが切り替わり、巨大な大砲(カルバリン砲)が出現。


南條

「さて、火薬革命の真骨頂は“大砲”です。

1発で城壁の部材を粉砕できる――

これは中世の“城が万能”という政治構造を完全に破壊しました。」


砲身に火縄が近づく。


南條

「着弾は“臭い”ではなく、今回は“痒み+風圧”です。」


全員

「組み合わせ技やめて!!!!!」


――着火。


ドオオオオオオオオン!!!!


爆風により全員が“脇腹〜背中”に猛烈なくすぐったさ+痒みコンボ。


野田

「痒っ……くすぐっ……ひゃぁぁああ!!!!」

(踊るように転倒)


富沢

「なんで爆発で痒くなるの!?!?!?」

(地面をかきむしる)


亀田

「先生これ拷問ですよ!!」


南條

「これでも現実より100倍優しいです。」


部長

「じゃあ現実はどうなるんですか……?」


南條

「現実では、城の上にいる人間は粉々になります。」


全員

「優しくない!!!!」


──────────────────────────


■第4節 社会を変えた“費用構造の逆転”


野田(涙目)

「で……でもなんで火薬で国が変わるんですか……?」


南條

「理由は簡単です。

火薬兵器は“個人で用意できないから”。」


ホワイトボードに矢印が描かれる。


騎士(個人の財力)

→ 火薬兵器(国家の財力)


南條

「つまり、

火薬時代の戦争=国家の財政力と工業力の勝負

です。

これにより封建領主は衰退し、

中央政府が強くなり、『近代国家』が成立します。」


富沢

「え……兵器が政治まで変えるんですか?」


南條

「兵器とは“社会制度を内包した技術”ですから。」


部長

「名言風に言わないで!!

意味は正しいけど!!」


──────────────────────────


■第5節 火薬革命の果てに生まれた“火力集中”という死の概念


南條

「火薬の最終到達点は“火力集中”です。

弓ではできないことが、銃と大砲では可能になる。」


・一斉射撃


・砲兵斉射


・戦列歩兵の平準化


・大量生産と大量動員


南條

「これは後の

・ナポレオン戦争

・南北戦争

・第一次世界大戦

・第二次世界大戦

すべての原点になる原理です。」


野田

「なんか……歴史が急に重くなってきましたね……」


南條

「火薬とは、“殺傷技術の民主化”です。

鍛錬の差がゼロになる代わりに、

国家の財政と物流で戦争が決まるようになった。」


亀田

「じゃあ今の私たちの世界の戦争も……?」


南條

「火薬革命が作った流れの延長線上にあります。」


──────────────────────────


■第6節 講義まとめ ― 火薬は“文明の戦争OSを書き換えた”


南條

「まとめます。」


■火薬革命の本質

1.物理法則の交代:筋力→化学反応

2.戦争費用の交代:個人→国家

3.戦争目的の交代:城→領土(国境)

4.戦術の交代:騎士→銃兵・砲兵

5.政治構造の交代:封建→中央集権国家


南條

「火薬は“兵器”ではなく“文明構造”を作り替えた技術です。

あなたたちが先ほど爆風で悶えていたのは――

それが“人間を超えた力”である証明でもあります。」


野田(まだ脇腹を押さえつつ)

「……もう火薬見たくないです……」


富沢

「次は……もうちょっと優しい世界……?」


南條

「次は“マスケット大量運用と銃剣突撃”です。」


全員

「優しくない!!!!!!」




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