第127章 古代兵器編
――ファランクス密集戦とエジプト戦車の地獄訓練
(新寺子屋訓練棟。巨大スクリーンの前に、例のメンバーが勢ぞろいしている。「TACTICUS-SIM β版」と表示されたロゴが青白く輝く。)
南條講師
「はい、では本日から“古代兵器・実体験シミュレーション”を開始します。
注意点として、このβ版は“負傷ダメージの代替感覚”が三種類あります。」
(野田が恐る恐る手を上げる)
野田
「せ、先生……あの“代替感覚”って噂の……?」
南條
「ええ。接触系ダメージは“くすぐったさ”、
切創・圧迫系は“痒み”、
衝撃・打撃系は“臭気”になります。」
富沢
「臭気って……どんな臭気なんだろ。戦場の……?」
南條(淡々)
「説明は以上です。では始めましょう。」
(全員)
「いや説明になってない!!」
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■第1節 ホプリタイ装備と方陣の“本当の重さ”
スクリーンが瞬時に切り替わり、
古代ギリシアの乾いた大地と、青い海の向こうに広がる丘陵が現れる。
同時にキャラクターたちの身体に、
**重すぎる装備が“自動装着”**される。
野田
「む、むり……重いです……腕が……!」
南條
「それがホプリタイの基本装備です。
胸甲5kg、円盾ホプロン7kg、槍3kg。
合計15kg前後ですが“片側に重心が寄る”ためバランスは最悪です。」
富沢
「ほ、ホプロン……これほんとに片手で持つんですね……」
南條
「はい。盾は“武器”です。
押し込む、ぶつける、隊形を支える。
防御というより攻撃的装備ですね。」
亀田(震えながら)
「足のすね当て(グリーヴ)、どれだけ硬いんです……?
これで走れって正気じゃ……」
南條
「その“正気じゃなさ”を体験するのが、このプログラムです。」
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■第2節 ファランクス密集戦 ――「人間が壁になる」現象
フィールドに味方の50名ホプリタイが並び始める。
野田たちは三列目に配置された。
南條
「ファランクスの核心は“密度”です。
隊列の乱れは死を意味します。
では、前へ――押し合ってください。」
(味方兵士が、背中を押してくる。強烈な圧力。足が勝手に動く。)
野田
「きゃっ……! 待って! 近い近い近い近い!!」
富沢
「これ、ほんとに押されるんだ!? 肋骨が……!」
亀田
「後ろの人の槍の柄が首にぐりぐりするんですが……っ」
南條(淡々)
「それが“古代戦争の現実”です。
個人戦ではなく“押す圧力の合計”が勝敗を決めます。」
――前方。
敵ファランクスが迫る。
槍の森が重なり合い、盾がぶつかり、
**戦場特有の“圧縮音”**が響く。
南條
「はい、接触します。」
(ドンッッッ!!)
強烈な衝撃。野田の盾に敵槍がかすめる。
野田
「ひゃああああああっっ!?!?」
体がけいれんし、その場に崩れ落ちる。
くすぐったさ判定:戦死。
富沢
「ちょっ!? 野田さん早すぎる!!」
南條
「槍の“擦過”はTickle判定ですから。妥当です。」
(富沢の盾の隙間に槍先が入り、太ももに軽い衝撃)
富沢
「んっ……!?な、なにこれ……っ、痒い……ッ痒いぃぃ!!」
(地面を転げ回る)
南條
「それはItch判定です。刺突系ですね。」
亀田
「先生、この判定システム絶対バグってますよね!?」
南條
「開発チームが“体験のリアリティ”を追求した結果です。」
(敵方陣が前進し、亀田の盾に敵槍が直撃)
亀田
「うわっ!!! 臭っっ!!! なにこれ!? 臭ッッッ!!!」
(鼻を押さえながら崩れ落ちる)
南條
「衝撃系はStench判定。衝撃波を“嗅覚刺激”に変換しています。」
亀田
「嗅覚刺激で衝撃波を再現しないでくださいよ!!」
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■第3節 突然の追加ミッション:エジプト戦車部隊の突撃
(シミュレーション空が揺れ、舞台が切り替わる)
南條
「後半は“複合兵科戦”を体験してもらいます。
エジプトの軽戦車が側面から突入します。」
副部長
「えっ、あれ、私たちの味方……?」
南條
「いいえ、あなた(副部長)が乗ります。」
副部長
「なんで毎回私なのぉ!!」
(エジプト戦車が自動召喚され、彼女だけ乗せられる)
南條
「戦車は御者+弓兵の2名構成ですが、今回はAIが御者です。
あなたは弓兵役です。」
副部長
「いやですいやです!!
こんなバネみたいな弓、絶対おかしい強度でしょ!!」
南條
「複合弓は木・角・腱を重ねた構造で、
単純な木製弓より3倍のエネルギーを蓄えます。」
副部長
「真面目な説明しながら戦わせるのやめて!!」
(戦車発進!! 急加速 → 副部長、後方へ引っ張られる)
副部長
「あああああああああああああああ!!!」
弓が振動して鼻先に軽く当たる。
副部長
「くっ……ふ……ッ……くすぐったいぃぃぃぃ!!!」
(戦車上で悶絶→落下→戦死判定)
南條
「振動によるTickle判定ですね。」
富沢
「先生、これ戦場じゃなくて罰ゲームじゃない?」
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■第4節 ファランクスが崩れる瞬間を“身をもって学ぶ”
残っているのは部長だけ。
敵戦車の矢が降り注ぎ、
部長の盾の縁に矢が当たる。
部長
「く……! でも私は倒れませんよ……うっ……?」
異臭。
部長
「くっさ!! くっさ!!!! なんですかこれ!!!??
ちょっ、ちょっと……む……無理……ッッ」
――部長も崩れ落ちる。
南條
「はい。Stench判定で戦死。
まあ、ファランクスが戦車と弓兵を同時に相手取ったら
基本的には崩壊します。」
(全員)
「冷静に分析してる場合じゃない!!」
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■第5節 講義まとめ:古代兵器の“構造”は体験してこそ理解できる
戦場が消え、白いシミュレーション空間へ戻る。
南條
「お疲れ様でした。
皆さん、身体は無事ですが、精神的には……まあ……」
(全員、床に座り込みながら疲労困憊)
南條
「今回の訓練で理解してほしいことは三つです。」
(指を折りながら)
1. ファランクスは“個人戦闘”ではなく“圧力の戦争”
→ 押す力・隊形維持が死活的
2. 戦車は“古代の高速火力プラットフォーム”
→ 弓兵×高速移動の恐怖
3. 古代戦争は“物理”で決まる
→ 槍の届く距離、盾の角度、戦車の旋回半径
南條
「兵器構造を知るには“触れて動かす”のが一番です。
次回は、中世騎士と攻城戦を体験していただきます。」
全員
「……次回も、悶えるやつですよね……?」
南條
「もちろん。」
全員
「もちろんじゃない!!!!」
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