第86章 主要改装項目
防衛省地下B-7会議室 ― 大和改装検討会(D-151)
長机の中央に、改装中の大和の断面図と艦内配置図が広げられている。
既に完成している部分は青く塗られ、まだ未着手または作業中の区画は赤く縁取られていた。
防衛装備庁・艦艇設計班長の秋津技監が、指先で青い部分をなぞる。
「電子戦装置、艦橋の統合指揮所、対空ミサイル用のVLS基部、主要通信システム——これらは既に完成しています。あとは大和に移植できるよう部分改修するだけです」
統幕運用課長が頷く。
「つまり、艦の頭脳と防空骨格は揃ったわけだな」
秋津が顔を上げる。
「ええ。しかし、戦闘艦として“海に出せる状態”にするには、これから5か月で対応すべき項目がまだ多い」
作戦幕僚長が眉をひそめる。
「洗い出してくれ。優先度順にだ」
秋津はスライドを切り替え、艦体の側面図を映す。
「現時点で残されている大項目は以下です——」
装甲強化
舷側・甲板ともに当時のままでは現代の対艦ミサイルに耐えられない。
特に甲板は巡航ミサイルの貫通力を考慮し、セラミック複合装甲か爆風吸収層を追加する必要あり。
機関換装
既存の艦本式タービンは再生可能だが、燃費と整備性が悪い。
出力を維持しつつ燃費改善を狙う現代ボイラー換装か、思い切ったガスタービン化かの選択が必要。
主砲の扱い
46cm三連装砲×3基を残すのか、撤去してミサイル発射設備に置き換えるのか。
残す場合は射撃管制と弾薬体系を現代化する必要がある。
副砲の扱い
現存の15.5cm副砲・12.7cm高角砲は現代戦では非効率。
速射砲(127mm単装砲や76mm砲)やCIWS、SeaRAMに置き換える案。
統幕運用課長が指先で4項目を順に叩いた。
「つまり、電子戦や防空の頭脳は完成しているが、“体と牙”はまだ半分しか出来ていないわけだ」
秋津が頷く。
「この4つをどう決めるかで、大和は『現代の戦艦』にも『大型ミサイル艦』にもなります。
ただし、残り5か月でやれる工事量には限界がある」
作戦幕僚長が低く言った。
「ならば順番に潰すしかないな。まずは機関、次に装甲——その後、主砲と副砲の扱いを決める」
秋津がスライドを閉じる。
「了解しました。では、次の議題は機関案の選定です」
会議室の照明が一段階落とされ、スクリーンには**「機関換装案 A/B/C」の文字が浮かび上がった。