第85章 大和改装方針決定会議
防衛省地下B-7会議室 ― 大和改装方針決定会議(D-152)
会議の冒頭で、海幕長が一言だけ告げた。
「大型空母の建造は間に合わない。代案として大和を改装し、主力艦として戦力化することは既に決定している」
机上には、大和の最新改装設計図と、台湾海峡周辺の作戦図が並べられていた。
作戦幕僚長が資料を指で叩く。
「問題は、この艦をどういう役割で使うかだ」
防衛装備庁・艦艇設計班長がスライドを切り替える。
「大和は全長263メートル、基準排水量6万5千トン。飛行甲板としての連続運用は制限がありますが、艦体規模は現代の空母に匹敵します」
統幕戦術分析官が口を挟む。
「固定翼戦闘機の運用は現実的ではありません。しかし——無人機なら話は別です」
壁面スクリーンに新たな図が映し出される。
中央の大和から、空・海・海中へ無数の矢印が広がっていた。
「空中ドローンによる偵察・電子戦・対地攻撃。
海上無人艇による対艦飽和攻撃と機雷敷設。
海中ドローンによる潜水艦・輸送船団への攻撃。
これらを同時運用する“多次元ドローン母艦”として再設計します」
情報本部電子戦主任が補足する。
「さらにAI制御システムを組み込み、作戦中のドローン群を半自律で統合管制可能にします。
人間は戦術判断に集中し、個別制御はAIが行う形です」
海自艦隊運用部長が、スクリーンを輪形陣の図に切り替えた。
中央に大和、その外周をイージス艦、ミサイル巡洋艦、潜水艦が取り囲んでいる。
「この布陣なら、米第七艦隊の空母打撃群と同等の多層防御が構築可能です。
大和は攻撃力の中核でありつつ、防空・対潜戦闘の司令塔にもなります」
作戦幕僚長は短く頷いた。
「つまり——米原子力空母の代わりに、日本型空母打撃群の旗艦として台湾防衛に参加させる、ということだな」
海幕長が結論を下す。
「よし。そのコンセプトで設計を詰めろ。次は、そのために必要な改修項目を洗い出す」
こうして議題は、装甲強化・機関換装・主砲・副砲という4つの核心へと移っていった。