第75章 超巨大プロジェクト始動
《極秘会合記録 第9回裏会議》
開催日時:令和8年(2026年)7月18日 19:30–23:55
場所:防衛省 地下B-7会議室
議題:「Y計画および大和再武装計画統合方針について」
(会議室の扉が閉じられ、電子ロックの赤ランプが灯る。参加者は全員、事前に提出した通信端末を没収され、机上には極秘資料だけが置かれている)
長机を囲むのは、防衛大臣、統合幕僚長、海幕長、防衛装備庁長官、内閣官房長官、そして呉から異動してきた大和乗員代表と海自現役士官たち。
官房長官が資料を開く。
「まず、週刊誌の報道——台湾侵攻が半年以内という件だが、結論から言う。
米インド太平洋軍の評価では発生確率は85%以上。D-Dayは令和9年1月から4月の間と見ている」
室内の空気が一段冷えた。
統合幕僚長
「これを受け、政府はY計画を前倒しする。
……諸君には伏せていたが、Y計画とは大型正規空母建造計画だ。
だが現状、空母本体は間に合わない。代わりに——完成済みの主要機器、兵装、主機を大和に移植する」
呉出身・大和航海長(元海軍中佐)
「……移植? 我々の艦に?」
防衛装備庁長官
「そうだ。
VLS、統合マスト、C4ISRシステム、近接防御システム、極超音速対艦ミサイル搭載プラットフォーム……すべてY計画のために設計された最新鋭装備だ。
排水量は当初予定していた空母よりも大和のほうが二回り大きい。スペースは十分確保できる」
海幕長
「条件は厳しい。完成期限は令和9年1月。
半年で移植、艦内部の補強・強化工事を同時並行で行う必要がある。
平日と夜間は全面改修、土日祝は記念館として上部甲板と艦橋のみ一般公開を続ける——これは国民と国際社会へのカムフラージュだ」
大和機関長(元海軍大尉)
「半年で……? それは、艦を建造するより難しいのでは」
防衛装備庁長官
「その通りだ。
だが、やる。国家予算は宇宙開発計画に匹敵する規模で投入する。
関係する技術者、造船所、電子機器メーカー、防衛産業の総力を結集する」
官房長官が最後に言葉を重ねる。
「今日この瞬間から、Y計画と大和再武装計画は統合される。
戦後最大の巨大国家プロジェクトだ。
これを成功させるか否かで、日本の次の百年が決まる」
誰も拍手はしなかった。
ただ重い沈黙の中、全員の胸に——これはもう後戻りできない、という確信だけが残った。