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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン2
302/2233

第73章 極秘計画の統合

場所: 防衛省 地下B-7会議室


議題: 「新大型航空母艦建造計画の経緯開示および最終段階移行判断」


(重い扉が閉まり、電子ロック音が響く。室内は誰も口を開かない。緊張が鉛のように重くのしかかる中、官房長官がゆっくりと席についた。)


官房長官 「——今日ここにいる諸君のほとんどは、断片的な情報しか知らされていなかっただろう。


無理もない。この計画は、それほどの秘匿性を要求された。だが、今から話すことは、この国の戦後安全保障史を、根底から書き換えることになる。」


「3年前の春、私は“ある予算書”にサインをした。表紙には『海自教育艤装研究(FY-令和4)』とあった。極めて平凡な、誰の目にも止まらない名目だ。だが、その実態は——新大型航空母艦建造のための核装備モジュール計画、通称『Y計画』だ。」


統幕戦略運用課長(驚きを隠せず、声を震わせる) 「……3年前から、ですか?」


官房長官 「ああ。きっかけは、令和4年3月に行われた台湾有事シナリオの極秘シミュレーションだった。米国防総省から、我々に突きつけられた通達がある。『日本が沿岸防衛の即応旗艦を持たなければ南西諸島防衛は破綻する』という、冷徹な一文だ。」


「その条件が——“3年以内に実戦投入できる大型艦”。我々は、その答えを、長年構想されてきた『大型正式空母』に求めた。」


(官房長官が指先で操作すると、スクリーンに時系列チャートが映し出される。光が室内を青く照らし、その計画の非情なまでの緻密さを物語っていた。)



Y計画 年表(官房長官説明)


令和4年4月: 防衛装備庁内に「特殊艦船研究班」を設置(人員9名)。名目は“護衛艦汎用装モジュール研究”。


令和4年10月: 三菱重工長崎造船所に「港湾作業訓練用艤装コンテナ」名義で発注。その中身は、VLS、CIWS、統合マストを収めたモジュールユニット。


令和5年3月: 横須賀基地内の未使用倉庫を改修、モジュール組立ラインを秘匿運用開始。


令和5年8月: IHI横浜工場にてガスタービン発電ユニットを製造、貨物船に偽装して輸送。


令和6年1月: NEC・三菱電機が艦載戦闘情報システムを完成。表向きは「護衛艦いずも改修予備品」として搬入。


令和7年7月: Keystoneモジュール群が全て完成。現在は横須賀第4ドックに分散保管されている。




官房長官(続ける) 「この3年間、この計画の全容を知る者は、内閣4名、防衛省6名、海自4名、企業幹部8名のみ。それ以外はすべて別名目、別予算、別契約で偽装し、我々はこの巨大な船の、心臓部を造り上げてきた。」


「——この会議で初めて、全容を明かす。今や、鍵は我々の手の中にある。」


海幕運用企画課長(沈黙を破り、重々しく) 「……なぜ今、開示を?」


(壁一面の大型スクリーンに、福建沿岸の高解像度衛星写真。整列する揚陸艦、RO-RO船、車両搭載フェリー。甲板には戦車とTEL車両の影)


官房副長官補

「米インド太平洋軍から極秘電。

最新解析では、中国の台湾侵攻は半年以内——最短で令和9年2月、遅くとも4月」


官房長官 「雑誌のスクープどおりだ。台湾有事のタイムラインが前倒しになった。」


「隠す段階は終わった——次は、動かす段階だ。」


今夜から計画を一本化する。


——Y計画とAOBA計画を統合し、全ての装備を大和へ移植する」




(室内に再び沈黙が訪れる。時計の秒針だけが、これから動き出す歴史の歯車のように、不気味な音を立てていた。)

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