第68章 Dday-150
沖縄・那覇市内某ホテル ロビーラウンジ
真夏の強い陽射しがガラス越しに差し込み、ロビーの床に長い光の筋を描いている。
窓の外では、青く澄んだ空を背景に、轟音を響かせながら銀色の機体が低く飛び去っていく。
「またあの大きい飛行機だ」
子供を抱いた父親が指をさす。スマホの画面越しに映るのは、嘉手納から離陸したRC-135電子偵察機。
ホテルスタッフは苦笑しながら言った。「この夏は特に多いですね。観光より飛行機撮影に来る人も増えてます」
美ら海水族館 屋外デッキ
陽炎のような熱気が海面から立ちのぼる。沖の水平線に、白い航跡を引く2隻の巡視船が見える。
双眼鏡を覗き込んだ年配男性が、「あれは海保のPL型だな、尖閣方面に行くんだろう」と説明してくれる。
周囲の観光客は「へぇ」と声を上げるが、冷房の効いた館内に早く戻りたそうな顔だ。
石垣港 遊覧船桟橋
真夏の観光シーズンで賑わう港だが、係員がマイクで叫ぶ。「15時便、欠航です!波が高くなっています!」
その沖合では、真っ白な巡視船がゆっくり旋回し、そのさらに向こうに灰色の艦影がぼんやりと浮かぶ。
「あれ自衛隊じゃない?」
麦わら帽子の女性が友人に話しかける。その艦は情報収集艦「みちしお」。東シナ海の航路でPLAN艦艇の出入りを監視していることなど、港のざわめきの中では誰も知らない。
那覇空港 展望デッキ
強烈な日差しに照らされた滑走路に、低くエンジン音を響かせながらP-1哨戒機が降り立つ。
「旅客機じゃないね」
双眼鏡を覗く子供の横で、海保航空隊のFalcon900がタキシングし、南西の空へ向けて加速を始める。
その機体の行き先は、観光客の目には「海の上」だが、実際には尖閣周辺海域——24時間続く監視の持ち場だ。