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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン2
279/2267

第58章 時代は接続している


有馬の指先が、砂地の中に沈む“何か”の金属的な輪郭をなぞった。それは、ただの錆びた残骸には感じられなかった。円形の縁、薄く湾曲した表面。古びた鋼鉄が、異様な冷たさをもって触覚に返ってくる。


彼はすぐに、ダイビンググローブを外し、慎重に砂を払い始めた。その形状が現れるにつれ、有馬の胸にかすかな異変が走る。


それは、彼の記憶の断片に刻み込まれた、ある恐るべき兵器のシルエットだった。


背後で竹中が、有馬の異変に気づき、ライトを集中照射した。照らされた先に露出したのは――アルファベットの打刻文字だった。


有馬は、すぐさま竹中に合図を送る。


彼は、人差し指でアルファベットの刻印を指し、続いて両手を広げて「見ろ」というハンドシグナルを出した。


竹中は、有馬の意図を察した。


有馬は、再び文字を指差した。


竹中は、その打刻文字を読み取り、驚愕に目を見開いた。


「…MK-45 ASTORP Mk2 Mod…」

「…USN - SERIAL 109837…」

「…NUCLEAR ORDNANCE - DO NOT TAMPER…」


有馬の脳が、戦慄とともに記憶を掘り起こす。それは、彼が知る歴史には存在しなかったはずの、未来の潜水艦が過去に残した「記憶」だった。


視線は魚雷の後部推進部に移っていた。推進ユニットは失われている。代わりに、後方から巻き付けるように設置された金属ワイヤの末端が、砂中の鉄杭に緊縛されている。


係留構造だ。そして側面には、薄く崩れかけた小型センサーモジュール。そこに、かすかに残るマーキングがあった。


“REMOTE ARM MODULE – USN PROTOCOL 421”

“SATELLITE RECEPTION DISCONNECTED”


「遠隔起爆装置……」竹中の言葉は水中には届かないが、有馬の目も、同じ意味を語っていた。


「そうりゅう」が遺していた“最後の切り札”


それは、タイムスリップ以前、沖縄近海において、極秘裏に米海軍から「特例移譲」を受けた唯一の兵器だった。


竹中二佐は、信じられないという表情で、水中ホワイトボードに震える手で書く。

「これは…あの時の核魚雷」


そうりゅう型潜水艦の魚雷発射管内に1発だけ装填された、用途はあくまで「最終兵器」――ロナルド・レーガン級原子力空母に対する先制阻止策として、船底爆破に備えて艦底に磁気係留されたものだった。


だがそれは、タイムスリップ後に「使用されることなく」沖縄の砂地に取り残されたのだった。


有馬は頷いた。


これは間違いなく80年前に原子力空母ロナルドレーガンの艦底に固縛し、遠隔起爆仕様に改造した、海自潜水艦そうりゅうに1発だけ搭載されていた、「マーク45型 核弾頭装着魚雷」だった。


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