第49章 那覇:過去を訪ねる旅の始まり
2026年7月。日本の夏は、熱気を帯びていた。 東京都内から羽田空港へと向かうモノレールの窓からは、高層ビル群がまばゆい光を放ち、その先には、太平洋へと続く青い空が広がっていた。戦艦大和の乗員たちは、特別休暇を利用して海上自衛隊の記憶保持者たちと共に、かつての激戦地、沖縄へと向かっていた。彼らの心は、これから訪れる地の歴史へと向いていた。
羽田空港の出発ロビーは、夏の旅行客でごった返していたが、大和の乗員たちの心は、これから訪れる地の歴史へと向いていた。有馬艦長、森下副長、江島砲術長、内藤上等兵曹、藤村分隊士ら、旧海軍の将兵たちは、現代の空港の喧騒に戸惑いつつも、どこか厳粛な面持ちで搭乗口へと向かった。彼らの隣には、竹中二佐、秋月一佐、渡会二佐、永田三佐、神谷一佐、斎藤三尉といった海上自衛隊の仲間たちが、彼らの心情を慮るように寄り添っていた。
約3時間のフライトを経て、彼らが那覇空港の滑走路に降り立つと、肌を刺すような真夏の亜熱帯特有の熱気と湿気が、彼らを包み込んだ。空は抜けるような青さで、まばゆい太陽の光が降り注ぐ。有馬は、かつて玉砕の地とされたこの島が、これほどまでに明るく、平和な姿に変貌したことに、深い感慨を覚えた。彼の記憶にあるのは、常に硝煙と血の匂いが立ち込め、絶望的な戦いが繰り広げられていた沖縄の姿だったからだ。
「まさか、この沖縄の地を、このような形で再び踏むことになろうとは…」森下副長が、静かに呟いた。その声には、過去への複雑な思いが滲んでいた。