第34章 裏の「極秘高官協議会」の反応
【永田町 地下第4会議室B】
—2025年3月3日 00:40、表会議終了から数時間後
重い防音扉が閉じられると、地下室の空気は静まり返った。蛍光灯は控えめに点り、壁際には防衛省・内調・公安・情報本部の面々が座っている。
南條修作(国家安全保障局・防衛担当審議官)は、紙一枚の資料を掲げながら言った。
「……ご覧の通り、“大和ホテル案”が会議で真っ先に検討されました。民間資本も乗り気で、文化・観光の側面が強調されています」
沈黙。
公安調査庁次長が呟くように言った。
「――バカバカしい。艦の意味を、何一つわかっていない」
隣の防衛装備庁・大井技術審議官も眉をひそめた。
「装甲艦を“商業建築”に? 排水量を維持したまま? 荷重計算も危ういし、艦体の金属疲労も精査されていない。技術的にも、政治的にも、完全な“演出”ですよ」
さらに、内閣情報調査室の守屋補佐官が、タブレットの画面を見せた。SNSと海外メディアの速報が流れていた。
「CNNは“Japan revives Yamato as floating hotel”、中国環球時報は“日本重新武装的象徴”と報じています。“平和の象徴”どころか、“帝国主義の復活”と受け取られ始めています」
南條は机に手を置き、静かに断じた。
「だからこそ我々の裏会議が必要なのです。“観光資産”ではない。“国家象徴”としての制御と運用。象徴は無防備ではいられない」
一人の陸幕の将官が小さく頷いた。
「保存か、解体か。それとも――再武装か」
最後の言葉がなぜかはっきりと会議室に響き渡った。