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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン2
246/2293

第33章 意外な案

ざわつく会場の片隅に、まるで場違いであるかのように、4人の姿があった。


軍服姿のまま沈黙していたのは、大和艦長であった有馬中佐。砲術長の江島大尉、航海科の樫井中尉、機関科の木村兵曹。彼らはこの会議に、『参考出席』の名目で呼ばれたにすぎない。

しかし、有馬は静かに手を挙げた。


「……失礼ながら、今のご説明、我々には理解できぬことが多すぎる。『ホテル化』? 『テーマパーク』?」

江島が低く呻くように続ける。


「46サンチ砲の砲身の中に……客を通すというのか。あそこで、俺は……俺は戦友を焼かれた。骨さえも残らなかったのだ」

場に沈黙が落ちる。


数名が顔をしかめる中、文科省文化財保護課の職員が柔らかく口を挟んだ。

「江島様、お気持ちは痛いほど分かります。ですが、これは決して『愚弄』ではありません。次の世代に語り継ぐための、新しい記憶の形式だとお考えいただければ……」


「語り継ぐ? では、語らせていただこうか」


有馬の声は静かだったが、その場にいた誰もが、背筋を伸ばさずにはいられなかった。


「我々は死にに行った。あの艦で、『国の最後』を見届けに。だが、それが今や『収益事業』』のために砲塔を飾り、甲板を歩道にし、遺体の上に笑顔を咲かせるという。……本当に、それが語り継ぐということか?」


議場に重い空気が満ちた。ややあって、観光庁の楠田次長が苦しげに言葉を継ぐ。

「ご意見、厳粛に受け止めます。有馬様のお言葉は、次回の議論へ正式に議事録として反映いたします……。ただ、我々にも『時代』という制約がございます」


傍聴していた民間企業の代表たちは、互いに目配せを交わし、沈黙のままメモを取っていた。


会議はその後、形式的な検討事項へと移った。


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