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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン2
244/2172

第32章 再浮上する戦艦


2025年3月2日 14:00/防衛省 市ヶ谷庁舎・大会議室A


防衛省本庁舎の地下にある大会議室A。その空調は、外の春の兆しとは裏腹に、冷たく乾いていた。空間は広大だが、そこに漂う空気は閉じている。天井から吊るされた照明が、重厚な楕円形の会議卓を照らし出す。


名札には、経済産業省商務情報政策局、観光庁地域資源部、文部科学省文化財調査官、防衛省統合幕僚監部、そして内閣官房副長官補室と並んでいた。


その背後には、三井不動産、JTB、HIS、DMM RESORTSをはじめとする大手建築コンサル数社のロゴ入りバッジをつけた企業関係者たちが、静かに控えている。


議事の冒頭、司会を務める観光庁次長・楠田良晴が、わずかに笑みを交えながら口を開く。


「本日はお忙しい中、戦艦『大和』の今後の利活用方針を検討する初回会合にお集まりいただき、誠にありがとうございます。なお大和乗員の代表者4名の方々につきましては、研修の途中ではありますが、オブザーバーとしてご出席を願っております。よろしくお願いいたします。」


背後の大型モニターには、『大和』がゆっくりと映し出される。周囲を囲む仮設ドック、海上自衛隊のタグボート、そしてその巨体の上に設けられた白いテントと観測ステージ。


「この場はあくまで検討段階ですが、本件は国内外の注目度も高く、文化的、観光的、経済的意義を踏まえた議論が求められております。さっそくですが、経産省・南出課長よりご説明を」


スーツに身を包んだ南出課長が、資料を指し示す。その言葉は淡々としていながらも、熱がこもっていた。


「戦艦大和は、単なる『歴史遺産』にとどまりません。戦後80年という節目において、我が国が有する『象徴的資産』として世界的に再評価されうる存在です」

スライドに映し出されたのは、事前に作成された**『活用案A〜C』**。


* A案:戦艦ホテル化案(客室棟、式典ホール、展望甲板)

* B案:完全ミュージアム艦(資料展示、実物艦内ツアー)

* C案:大和パーク構想(艦上エンターテイメント空間、ドローンショー、海中プロジェクション)


「特にB・C案は、国内外からの観光誘致と接続し、年間来場者数は400万人以上と試算されています。『平和の象徴』として再生する――それが我々の目指す方向性です」


会場の空気が微かにざわついた。



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