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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン17

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シーズン6 スピンオフ 地雷と壁の戦術(工兵・障害物・路線管理)


時刻は午前4時。空はまだ黒い。俺は通信ヘッドセットをつけ直したまま、屋上から降りて、タスクフォースの生命線である工兵の作業現場へと向かった。彼らの仕事は、M1A2の機動性という最大の武器を、地面から奪うことだ。


俺たちの計画の第3段階は、敵のM-Kill(移動不能)を狙う工兵・障害物による遅滞(Delay & Deny)に特化している。


「工兵中隊長、進捗はどうか?」

「シャドウ・ワン。主要路三箇所への可搬障害バリケード配置完了。敵が最も機動力を活かせる、幅の広い進入路を狙いました。すべて工兵の専門管理下で、敵の機動を計算に入れ、路線の塞止を完了しています」


俺は頷いた。M1A2が最も嫌がるのは、進路妨害だ。彼らは強引に突破しようとするだろうが、一時的にでも立ち止まれば、屋上や高層階の対戦車チームの格好の標的になる。


次に、最も危険で、しかし最も効果的な地雷・IEDの配置だ。

「地雷検知センサとの連携は?」俺は声を潜めた。

「配置完了です。交差点の手前、特にM1A2が旋回を強いられる路地の奥を狙いました。敵が避けられない場所です」


この配置は、工兵の専門管理下で、かつEODチームの待機が絶対的な前提だ。地雷とIEDは、M1A2にとって最も静かで、最も破壊的な脅威だ。目標は、車体の底面か、履帯。M-Killこそが、装甲部隊を都市で無力化する最も確実な手段だからだ。


俺は地図上のマーキングを確認し、一つ一つの障害物が、敵の進路と機動をいかに精密に妨害するかを計算した。ここで敵が立ち止まれば、彼らは一瞬にして固定された標的となる。


M1A2が地雷や障害物で立ち往生した場合、彼らは必ず火力で解決を図ろうとする。

「敵は必ず120mm主砲で、壁を破り、『Mouseholing(通路の破砕)』で侵入してくる」


俺は、中隊長に向かって言った。「ブラッドレーの歩兵が先行し、戦車が援護射撃をする。『扉ではなく壁を通る』のが奴らの鉄則だ。だから、重要な防衛ポイントになっている建物は、内部で補強しろ。あるいは、連通を塞ぎ、歩兵の防御点を固めろ」


敵が壁を破った瞬間に、そこに二重の防御線が存在するようにする。瓦礫と粉塵が晴れた時、待ち伏せている歩兵が、混乱した敵歩兵に一斉射撃を浴びせる。この仕込みが、戦闘の初期段階で敵の歩兵に「都市は危険だ」と認識させるための、最も重要な心理的防御になる。


俺は、瓦礫の山に座り込み、冷たいコーヒーを口にした。

「彼らは『機動よりも観測優先』で慎重に進むだろう。だが、障害は彼らのその機動を奪う。遅滞と拒否(Delay & Deny)は、この街で戦車に勝つための呪文だ」


夜間の作業は極限まで進んだ。工兵は汗とコンクリートにまみれ、全ての仕掛けを所定の位置に収めた。俺たちの都市防衛は、これで物理的な「罠」として完成に近づいた。

次は、この罠を維持し、そして被害を回復するための、持久力と指揮統制(C2)の確立だ。夜明けはもうすぐそこまで来ている。

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