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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン2
235/2311

第25章 回避


右舷前方の警備艇が、次第に針路を逸らし始めた。直接の通信応答はない。だが、僚艦の変針と時を同じくして、上空を旋回していたKJ-500型の早期警戒機も北方へと姿勢を転じた。


「……監視は継続、だが進路妨害はせず、か」

竹中二佐が低くつぶやいた。


「ぎりぎりの線ですね。挑発せず、記録しておく——といったところでしょう」

「……つまり、あの海警船も“こちらを見てるだけ”ってわけか」

木村下士官が呟く。


「だけど、“あの大和”が沈んだ場所に戻るってのは、どう思われてるんですか?」

「感情はどうであれ、彼らも情報は持っている。日米の衛星が追っている以上、中国も航跡を監視しているはずだ」


永田三佐が短く答えた。

「我々がどこに向かっているか、彼らも分かっている。——だが、そこで行われるのが“戦闘”ではなく、“慰霊”である限り、武力介入は国際的に正当化できない。……そういう時代です」


艦の針路はまっすぐ、東シナ海の中央に向かっていた。


レーダーは沈黙し、海は穏やかだった。空にはまだKJ-500の電子ノイズが漂うが、すでに遠ざかっていた。


「信じられんな……。昔の俺たちなら、こうは行かなかった」

砲術長・江島中尉がぽつりと漏らす。


「敵艦が見えたら、即時警戒。距離を詰めたら戦闘配置。だが、今は“見るだけ”か」


「時代が変わったということです」

竹中が頷く。


「戦いの定義も、国家の正義の論理も。今や、戦う前に世論を制することが戦争の第一段階なんです」


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