シーズン6 スピンオフ 火力使用原則とマウスホーリング
目標地点の住宅街に到達した。ここは建物が密集し、路地は狭く入り組んでいる。俺たちの火力使用原則は、この環境に合わせて極度に厳格化されている。
「ハンマー・ワンより全車、確認。主砲(120mm)の使用は、敵が建物内で明確に確認された場合に限り、建物貫通用途として制限する」
俺は、目標の建物を見据えた。俺たちの主砲は、敵の戦車を貫くためのものだ。市街地で無闇に使えば、民間人の被害を拡大させ、後続の歩兵の進路を瓦礫で塞ぎかねない。使う時は、一発で敵を仕留める手術的な精度が求められる。
「ハンマー・ツー、左手の路地。動きあり。敵の軽装甲車両と歩兵一組だ」
「了解。.50口径M2HB(車長用機銃)で制圧する!」
俺は車長用サイトで目標を捕捉し、M2HBを撃ち始めた。ドッドッドッドッ!12.7mmの重機関銃弾は、路地、車両、そして歩兵に対しては、主砲に匹敵する恐ろしい制圧力を発揮する。車両は蜂の巣になり、歩兵は物陰に張り付いたまま動けなくなった。
「ハンマー・スリー、残敵が窓に潜伏している。7.62mm同軸機銃で抑圧射撃を継続!顔を出させないようにしろ」
同軸機銃の掃射音が、断続的に通りに響く。7.62mm弾は、敵に抑圧と恐怖を与え、その場に釘付けにする。主砲を使うまでの時間稼ぎであり、歩兵が次の行動に移るための盾だ。
その時、後方の通りから敵の増援が接近しているのが確認された。撤退ではないが、一時的に敵の視界を遮る必要がある。
「全車、スモーク発射器(M82A1)!敵の通りに発射!」
ドッ、ドッ、ドッ。装甲側面の発射器から白リン弾が飛び出し、数秒後には通りを厚い白煙が覆い尽くした。スモークの役割は、撤退あるいは位置偽装だ。敵は俺たちの正確な位置を見失い、その隙に俺たちは戦術的な配置転換を完了する。
「ストライカー・ワン、目標ビルに到達するぞ。ファルージャ戦の原則だ。扉ではなく壁を通る」
俺は、砲手に最後の確認をした。「貫通弾、用意。目標、ビルの二階、角の部屋。通路を造れ(Mouseholing)」
俺たちの120mm主砲は、住宅街の壁面を粉砕するために使用される。**「マウスホーリング」**と呼ばれるこの戦術は、防御側の射界を無力化し、歩兵が通路として突入することを可能にする。
ドォン!
砲弾が分厚いコンクリート壁に命中し、壁面が大きく吹き飛んで巨大な穴が開いた。瓦礫の煙が晴れると、歩兵突入のための完璧な通路が完成していた。
「ストライカー、突入許可!壁から入れ!」
俺は砲口をそのままに、歩兵たちが鉄の壁を抜け、敵の待ち受けるビルへと突入していくのを見守った。俺たちの存在理由は、常に彼らの盾となり、道を開くことだ。