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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン16
2098/2187

第51章 ビッグエイトと心理戦争


課長: (鋭く資料のケンブリッジ・アナリティカ(CA)の項目を指す)「さて、この心理プロファイリングの事例こそが、この本の最も強烈な裏付けです。フェイスブックの『いいね。』だけで、人種、性別、性的嗜好、そして支持政党までを高い精度で予測できる。これはもはや、意識を騙すマジックではなく、無意識を直接操作するサイコグラフィックスです。」


伊藤さん: 「技術的な核心は、コシンスキーらの研究に基づいた、SNSの行動データとビッグファイブの相関分析です。AIに深層学習ディープラーニングさせることで、『どの性格タイプが、どのメッセージに反応するか』という予測モデルを構築しました。CAが有権者を32の性格グループに分け、それぞれの神経症傾向や経験への開放性に合わせて広告を変えたのは、このモデルの応用です。」


主任: 「8700万人のデータ流出ッスか!トランプ大統領の誕生やEU離脱に影響を与えたって…倫理的観点から見ても、予算から見ても、スケールがデカすぎるッス!俺の神経症傾向が限界ッス!」


渡辺さん: (静かに)「倫理を問うのは、左脳の役割です。しかし、この手法が成功したのは、『心は進化の適用』という原則に基づいているからです。SNSの『いいね。』や音楽の好みは、『私はこのようなキャラです』という無意識のメッセージを発信するツールであり、私たちは常に最適な相手と出会うために、このメッセージを交換し続けている。政治的信条も、結局は群れの中での生存戦略の表れに過ぎません。」


高橋さん: 「そうだね。最初のデートで好きな曲を聞く理由が、相手の性格を知る良い指標になるという実験結果がそれを物語っている。服の趣味や音楽の趣味が合わない人とは、無意識のメッセージの波長が合わないんだ。」


小林さん: 「カワイイ!じゃあ、CAのやってたネイティブ広告って、すごく合理的ってことッスよね。神経質な人には、『ヒラリーは国を破壊する』みたいな恐怖に訴える広告が20%も高い効果を示す。それは、その人のキャラ(パーソナメーター)に合わせた最高のアクセサリーを提示しているってことッス!」


佐藤くん: 「アクセサリー!俺の**『熱意』というアクセサリーは、どの性格グループに効くッスか?CAが使った『注意、サメの目撃情報アリ』の看板のように、俺は『脅威の看板』として、新入生の交感神経**に訴えかけるッス!」


課長: 「佐藤くんの熱意は、外向的で協調性に欠ける**『個人主義者』グループに有効でしょう。彼らは『自分で判断したい』というナルシシズムが強い。君の熱意は、『自立』や『防御』といった言葉を含むメッセージと同様、彼らの主役としての自覚を刺激する。さて、ここで重要になるのが、著者がビッグファイブに加えた『外見』と『知能』**です。」


伊藤さん: 「この本がビッグエイトを提唱するのは、知識社会における知能の優位性と、生存・生殖における外見の重要性を無視できないからです。著者は、**『人格パーソナリティは、内面ではなく観客の評価がフィードバックされたもの』だと述べています。外見や知能も、社会から得られる評判フィードバック**の強力な要素です。」


渡辺さん: 「その通りです。CAはビッグファイブで有権者を動かしましたが、もし彼らがビッグエイト、特に知能のパラメーターを使っていれば、特定の情報源を信じやすい層と、懐疑主義者をより精密に選別できたでしょう。**心理操作(PsyOps)**とは、結局、キャラの持つパラメーターの弱点を突くことに他なりません。」


主任: 「(震えながら)俺の**『神経症傾向』と『低知能』がバレたら…!俺はCAによって『投票を思いとどまらせるグループ』に分類されるッスか!?そして、俺のカトリック系のクッキーの趣味から、俺の信心深さも予測されてたッスね…恐ろしいアルゴリズム**ッス!」


課長: 「恐れる必要はありません、主任。パーソナリティはアクセサリー、つまり演じるキャラです。CAは世界を動員する手法を発見しましたが、私たちはそれを利用して、人を幸せにするマジックに応用すればいい。次の章では、このビッグエイトをどう解釈し、私たちのサークル活動に適応させるか、つまり**『成功するパーソナリティ』と『失敗するパーソナリティ』**について議論しましょう。」


議論は、心理プロファイリングの驚異的な力と、その倫理的な問題を超越し、パーソナリティの進化論的役割へと進んでいった。

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