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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン2
206/2347

第3章:鋼の神話、未来に浮かぶ

■ 戦艦「大和」艦橋・指揮所——2025年4月1日 午前4時52分


甲板をなめる風が、肌に異様に冷たかった。

それは戦場で嗅ぎ慣れた火薬のにおいではない。もっと清浄で、人工的で、そして異常に明るかった。


有馬艦長は、無言で艦橋の窓から海を見つめていた。

視界の先にあるのは、見たこともない形状の艦艇群。

全身銀灰色に塗られた滑らかな装甲。巨大な艦橋に、林立する円筒形の装置。

側面には、白地に赤の旭日ではなく、白地に青の菱形紋章——海上自衛隊のエンブレム。


「……やはり……我々は、戻ってきたのだな」


その背後で、副砲指揮官の江上大尉が小さくうなずいた。


「……艦長。あれは『まや』型護衛艦です。レーダーはフェーズドアレイ。航空艦も含まれます。……我々が戦った、あのときと同じ……」


「記憶が、あるのだな?」


「はい……はっきりと。

未来の日本の兵たちと、共に戦った沖縄の海。夜の空に飛んでいたのは零戦ではなく、F-35……」


有馬はうなずいた。

「私も、夢のようだと思っていた。だがこの目に、それが再び映っているのなら……それは現実だ」


艦橋後方では、通信兵の中村一飛曹が頭を抱えていた。


「……電文、来ません。短波帯、混信だらけです。いや……これは、通信じゃありません……デジタル信号? 何です、これ……文字じゃない……」


艦内は静まり返っていた。


誰もが口を開けずにいた。

自分たちが一度“時を越えた”ことを知っている者と、そうでない者が混在していることを、全員がうすうす感じ始めていた。


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