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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン16
2056/2254

第9章 経済学的に最も正しい投資法


渡辺さん:

(いつものように静かに、しかし不思議な熱意を込めて)


…みなさん。私は、株の世界の、もうひとつの究極の答えを見つけました。それは、ノーベル経済学賞を受賞した、たくさんの賢い学者さんたちが導き出した答えです。


小林さん:

(スマホをいじる手を止め、前のめりになって)


ノーベル賞ですかー!なんか、すごそう!それって、魔法の公式みたいなものですかー?


高橋さん:

(眉間に皺を寄せ、理解できないといった様子で)


ふん。ノーベル賞だろうがなんだろうが、株なんて当たるか外れるかだろ?机上の空論だろうさ。


渡辺さん:

はい。その通りです。ですが、彼らは「リスクとリターン」の関係を、数学的に証明したそうです。ハリー・マーコウィッツという学者が提唱した「モダンポートフォリオ理論」というものだそうです。


伊藤さん:

(少し斜に構え、クールで知的な口調で)


ふうん。つまり、複数の銘柄を組み合わせることで、リスクを抑えながらリターンを最大化する「分散投資」の重要性を示したってことね。たった一つの銘柄にすべてを賭けるのは、あまりに非合理的だわ。


渡辺さん:

はい。そして、ウィリアム・シャープという学者は、さらに面白いことを発見しました。市場が完璧に効率的であれば、すべての投資家が市場全体に存在するすべての株式を、時価総額に応じて保有するのが最も合理的だと結論づけたそうです。


佐藤くん:

(もじもじしながら、どもりがちに)


…あの、本に書いてあったんだけど、「効率的市場仮説」って、そういうことだよね?


渡辺さん:

はい。その理論に基づくと、個別の銘柄を選んで、市場全体の平均を上回ることは、とても難しいそうです。なぜなら、株価は常に、すべての情報が反映された正しい価格で動いているからだと。


課長:

(深く頷きながら)


なるほど。まるで、手品サークルで、誰が一番うまいか、競い合っているようなものだな。僕たちがどんなに頑張っても、手品のプロには勝てない。それなら、もう、プロ全体に任せてしまえばいい、ということか。


主任:

(課長の言葉を補足するように)


そうです!そして、その一番賢い選択が、インデックスファンドへの投資だそうです!市場全体を縮小コピーしたファンドに投資し、長期的に保有することが、最も賢明な選択なんだそうです!


渡辺さん:

(ここで、渡辺さんはテーブルの上の紙をもう一枚、皆の前に出す。それは、日本の地図と世界地図が並んで描かれたものだった。)


インデックスファンドというのは、例えば、日本の株式市場全体を一つのカゴに入れたようなものです。トヨタやソニーといった大企業から、小さな会社まで、すべての株を、それぞれの会社の大きさに合わせて少しずつ持つことになります。まるで、日本のすべての会社に、少しずつ出資しているようなものです。世界株のインデックスファンドなら、世界中の会社に少しずつ出資していることになります。


小林さん:

えー!そんなにたくさんの会社の株を、どうやって買うんですかー?


渡辺さん:

はい。それがインデックスファンドのすごいところなんです。私たちは、たった一枚の紙切れを買うだけで、それが自動的にたくさんの会社の株に分散投資してくれるんです。まるで、魔法の貯金箱みたいです。100円入れれば、口から120円が引き出せるような。


高橋さん:

ふん。それがどうして、一番賢い投資法なんだい?


渡辺さん:

はい。橘さんは、こうおっしゃっていました。「インデックスファンド」は、時間とともに「当たりくじが増えていく宝くじ」のようなものだと。宝くじの当選番号は完全にランダムに決まるので、必勝法なんてありません。でも、もし当たりくじの本数が時間とともに増えていくとしたら、一番賢い行動は、ただその宝くじを買い続けて、ずっと持っていることだそうです。


課長:

(深く頷き、感心したように)


なるほど。つまり、どの会社が儲かるか予想するのではなく、資本主義というシステムそのものに賭けるということか。


主任:

(課長の言葉を補足するように)


そうです!そして、そのシステムは、長期的には市場が拡大し、株価が上昇するから、ただ持っているだけで、最終的には儲かるという理屈なんです。


高橋さん:

(腕を組み、いかにも人生経験豊富で世間擦れした、懐疑的な口調で)


やっぱりな!ノーベル賞だろうがなんだろうが、結局、この日本じゃ通用しないってことか!バブル崩壊後、日本の株価は全然上がらなかったじゃないか!


渡辺さん:

はい。ですが、橘さんは、それでも「インデックスファンドへの長期投資」を推奨していました。なぜなら、それが「経済学的に最も正しい投資法」だからだと。そして、日本の株式市場の期待リターンは長くマイナスだったから、経済学的に正しい投資法を行うと、数学的な正確さを伴って富が失われていっただけだとおっしゃっていました。

(全員で手品をしながら、妙な空気が流れる。渡辺さんは一人、株価チャートの画面を食い入るように見つめている)

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