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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン16
2053/2172

第6章 神様と花咲かじいさん


(いつものように静かで、しかしどこか不思議な熱気が満ちた空間で、渡辺さんがテーブルに小さな紙の山を広げている。)


渡辺さん:

…みなさん。私は最近、また一つ、不思議なものに出会いました。株の世界には、神様のような方がいらっしゃるそうです。


小林さん:

(スマホをいじりながら、顔を上げて)


えー!神様ですかー?なんかすごそう!どんな神様ですかー?株価をぐーんと上げてくれるとか?


高橋さん:

(腕を組み、いかにも人生経験豊富で世間擦れした、懐疑的な口調で)


ふん。神様だなんて、どうせ胡散臭い話だろう。そんな簡単に儲けさせてくれる神様なんているもんかね。


渡辺さん:

(高橋さんの言葉にゆっくりと頷き、静かに紙の束から一枚の写真を出す。それは、にこやかに笑う初老の男性の写真だった。)


はい。ですが、この方は、本当に「神様」と呼ばれているそうです。ウォーレン・バフェットさん。彼は、たった百ドルの資金を、半世紀かけて約13億倍にしたんですって。


小林さん:

(目を丸くして)


ひゃくどるが、じゅうさんおくばい!?えー!信じられない!まるで、花咲かじいさんみたいですねー!


渡辺さん:

(小林さんの言葉に、小さく微笑むように頷く)


はい。橘さんは、バフェットさんは、ウォール街から遠く離れた田舎町で、静かに驚異的な投資実績を実現したから、まるでアメリカ人が理想とする、ちょっと口うるさいけれど親切な、田舎のお金持ちの叔父さんそのものだとおっしゃっていました。


高橋さん:

(少しだけ顔を和らげて)


ふうん。派手な格好をして、偉そうにしてる奴より、よっぽどいいじゃないか。で、そのおじさんは、どうやってそんなに儲けたんだい?特別な方法があるのかい?


渡辺さん:

(テーブルの上の紙を指でなぞりながら、ゆっくりと説明する)


はい。彼の投資法は、とても分かりやすいそうです。バフェットさんは、企業の財務諸表などから、その会社が本来持っている「本質的な価値」を推定します。そして、現在の株価が、その「本質的な価値」よりもはるかに安ければ、大量に株を買って、市場が自分たちの間違いに気づいて株価が上がるのを待つそうです。


伊藤さん:

(少し斜に構え、クールで知的な口調で)


つまり、ファンダメンタルズ投資ってことね。企業の収益力とか、資産の価値とか、そういう基礎的な部分を徹底的に分析する。テクニカル投資とは真逆のアプローチだわ。


渡辺さん:

はい。そして、バフェットさんは、たった一つの銘柄を何十年も保有し続けることがあるそうです。これは、まるで、花咲かじいさんが、枯れ木に花を咲かせるまで、じっと待っているようです。そして、投資している会社を「所有している事業」だと捉え、企業の本質的な価値を理解するために、会社の歴史やストーリーまで深く読み込むそうです。


佐藤くん:

(話に加わりたそうで、もじもじしながら、どもりがちに)


…あの、僕、武田和兵衛さんっていう、日本の昔の投資家を知ってるんだけど…。その人も、バフェットさんと同じように、花咲かじいさんみたいに、長い年月をかけて投資してたんだって。


渡辺さん:

(佐藤くんの言葉に、嬉しそうに頷く)


はい。橘さんは、バフェットさんの投資法は、日本の武田和兵衛さんという、江戸時代から大正にかけて活躍した投資家にも通じるとおっしゃっていました。武田さんは、有望な会社の株を買い、それを決して売ることなく、じっと持ち続けました。その間、ただひたすら待つだけ。まさに、花咲かじいさんです。


課長:

(深く頷きながら、まるで手影絵の完成形を見通すように、明確な口調で)


なるほど。つまり、デイトレードのような激しい動きとは真逆の、静かで、とても忍耐のいる投資法なんだな。我々が手影絵で一つの影を完成させるのに時間がかかるように、株も、時間をかけてじっくりと育てるということか。


渡辺さん:

はい。バフェットさんや武田さんのような投資家は、いわば「種をまき、じっと育つのを待つ人」です。一方、デイトレーダーは、地面に落ちた種がどこに転がるか、ひたすらサイコロを振っている人なのかもしれません。



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