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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン16
2047/2267

第0章  避難所カフェ「灯(ともり)」

大阪の下町。商店街の外れに、トタンと合板で急ごしらえした小さな建物がある。かつて青果店だった鉄骨スレートの倉庫を、ボランティアたちが修繕して避難所に変えた。入口の上には、木の端材を釘で打ちつけた看板が揺れている。白ペンキで「灯」とだけ書かれていた


 旧商店街の倉庫を改装した小さな喫茶兼集会所――避難所カフェ〈ともり〉。

 店の入り口には「Wi-Fiあり」「給湯15時まで」と手書きの札。外のベンチには、電源を求めて並ぶスマホとノートPC。天井には裸電球がぶら下がり、発電機の低い唸りが途切れ途切れに響く。


 かつての東京から避難してきた人々が、ここで日々の“生存と会話”を繰り返していた。

 関西訛りと関東訛りが入り混じり、職業も年齢もまちまちだ。

 スーツ姿だったサラリーマンは今では土埃まみれのボランティア用ベストを着こなし、学生はノートの代わりに古新聞の裏にメモを取る。商店主は、救援物資で届いたコーヒー豆をすり潰して無料で配る。昼過ぎになると、誰かが小さなスピーカーでラジオを流し、ニュースと音楽が交互に途切れる。


 政治も経済も崩れ、株式市場などとうに消えた世界で、なぜか今日は「お金の話」をしたがった。

 それは、もう一度「未来」を考えるための、かすかな練習のようだった。


 カップの底で沈んだインスタントコーヒーの泡が、電灯の光を反射する。

 渡辺さんが、持ち込んだ古本とメモ用紙をテーブルに広げる。

 周囲の空気が、自然と静かになる。


 ――そして、「臆病者の投資法」が始まる。


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