第1章 異常艦影出現
■ 那覇沖・2025年4月1日 午前4時50分
護衛艦「まや」CIC(戦闘指揮所)
レーダー管制員が声を上げた。
「艦影——出現!方位310、距離3,200ヤード、AIS応答なし!識別不能!」
艦内に警報が鳴り響く。
CIC内の空気が、わずかに硬直した。
「可視光カメラ、スクリーンへ!」
大型モニターに切り替わった画像に、誰もが息を呑んだ。
そこに映っていたのは、時代錯誤の鋼鉄の巨艦——
前甲板に3連装の主砲塔を2基、その背後にそびえる艦橋構造物、2本煙突、後部甲板にさらに巨大な砲塔。
「……まさか……」
「これ、映画セットじゃないよな……?」
「なんだこの船……軍艦?でもデザインが……旧海軍型……?」
訓練参加中の士官たちは、互いに顔を見合わせた。
音響、赤外線、レーダー、IFF——あらゆる識別プロトコルが「正体不明」を示していた。
■ そのとき、副長の永田三佐は——
「艦長、進路変更の指示を……」
当直士官が振り返ると、副長・永田三佐は冷静にモニターを見つめていた。
「進路は維持。変針せず、速度も維持。
距離2,000ヤードを切ったら、通常の警告プロトコルに従え。
それ以上の接近があれば、主砲管制システムをスタンバイに——ただし、発砲判断は俺がやる。」
「はっ……!」
若い士官は、思わず敬礼しながら戸惑った。
なぜ副長はこんなにも冷静なのか?
永田の目は、ただ一点。
モニターに映るその艦影。
そして、その艦橋の位置と形状——
「あれは、“大和”だ」
彼の胸中には確信があった。
自分は、そこにいた。
この艦の艦橋に。
昭和の兵と並び、米軍の艦隊を狙った記憶がある。
——戻ってきたんだ。