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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン15
1976/2316

第132章  円を測る ― πのはじまり




1. 導入 ― 円を「測る」とは?


 新寺子屋の教室に、先生〈オルフェウス〉が大きな円形の木の板を持ち込んだ。机に置かれたそれは、表面にきれいな模様が描かれている。


先生:「さて、昨日は円を“自然の象徴”として見てきたね。でも今日は少し違う。人間はやがて“円を測る”という挑戦を始めたんだ。」


生徒A(中学生):「測る? どうやって?」

先生:「円の“外周”と“直径”を比べるんだよ。」


(先生は板の直径に糸を当て、次に外周を測って見せる。)

先生:「外周を直径で割った数――これが、後に“π”と呼ばれるものだ。」


2. エジプトのπ ≈ 3.16


先生:「古代エジプト人は、ピラミッドの建設やナイル川の氾濫後の測量で円を扱わなければならなかった。彼らの記録“リンド数学パピルス”(紀元前1650年頃)には、円の面積を出す方法が載っている。」


(先生が黒板に書く:半径を9とすると、面積を「8の2乗=64」として計算。)


先生:「つまり、直径を9分の8にして平方したんだ。この方法を数式に直すと、円周率はおよそ3.16になる。」


生徒B(高校生):「あれ、けっこう近い!」

先生:「そうだね。現代のπ(3.14159…)と比べても、驚くほど良い近似だ。当時の測量や建築には十分な精度だったんだよ。」


3. バビロニアのπ ≈ 3.125


先生:「一方、メソポタミアのバビロニア人は、くさび形文字で記録を残した。紀元前1800年頃の粘土板では、円の周を直径の3倍と少し――つまり“3 + 1/8(= 3.125)”としていた。」


生徒C(大学生・数学専攻):「3.125も結構近いですね!」

先生:「そう。エジプトの3.16よりやや小さいけど、こちらも農耕や建築に十分だった。彼らは60進法を使っていたから、“1/8”という分数表現が扱いやすかったんだ。」


4. πの実用性


先生:「じゃあ、なぜ人々はπを求めたんだろう?」


生徒D(高校生・歴史好き):「建物の設計とか?」

先生:「そう。たとえばピラミッドの傾斜角を決めるには、円弧の長さや勾配を考えなければならない。

 また、バビロニアの天文学では、太陽や月の軌道を円として計算する必要があった。」


生徒E(小学生):「じゃあ、πって昔から“工事”とか“星の観察”に使われてたんだ!」

先生:「その通り。πは“神聖な円”を“現実の道具”に変えるための鍵だったんだ。」


5. 象徴から数値へ


先生:「大事なのは、ここで円が“象徴”から“数値”へと変わったことだ。

 エジプト人にとって円は太陽神ラーの姿でもあったけど、同時に“直径×3.16”という数字に落とし込める対象にもなった。

 バビロニアでも、月の軌道は“神の運行”であると同時に“3.125”という比率で計算できた。」


生徒F(高校生・哲学好き):「なるほど……円は神秘と実用の両方を持ってたんですね。」

先生:「そう。そしてこの“二重性”こそ、数学の魅力なんだ。神聖な形を数値化することで、人類は自然を支配する力を得たんだよ。」


6. 授業のまとめ


先生:「今日のポイントをまとめよう。

1.エジプトでは π ≈ 3.16 が使われ、建築や測量に活用された。

2.バビロニアでは π ≈ 3.125 が使われ、天文学と暦に応用された。

3.円は象徴であると同時に、計算の対象=数値へと変化した。


次の節では、ギリシャの数学者たちがこのπをさらに精密に求め、“円を理論的に解明しようとした”物語を見ていこう。」


放課後の気づき


 授業を終えた生徒たちは、縄と棒を使って円を描き始めた。ひとりが直径を測り、もうひとりが周を紐で測る。

「だいたい3ちょっとだ!」と驚きの声が上がる。

円は目に見える神秘でありながら、手で測れる数でもある――そのことを彼らは体感していた。


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