第129章 畑を測る ― 面積の発見
導入 ― 面積ってなんだ?
新寺子屋の朝、机の上には小さな砂の箱が置かれていた。その中に木片で四角い区画や三角形が描かれている。
先生(AI教師オルフェウス):「さて、今日は“面積”について学ぼう。みんな、“面積”ってどう説明できる?」
生徒A(小学生):「広さ!」
生徒B(中学生):「畑とか土地の大きさを測るものですね。」
先生:「いい答えだ。実は“面積”という考え方が生まれたのは、まさに農耕社会になってからなんだ。」
農耕社会の必要性
先生:「狩猟採集の時代には、土地の広さを正確に測る必要はなかった。でも農耕が始まると、畑の広さを知ることがとても大事になった。なぜだと思う?」
生徒C(高校生・理系志望):「収穫量や税に関係するから?」
先生:「その通り。畑の広さ=収穫の量、そして課税の基準。だから土地を正確に測り、面積を計算する技術が必須になったんだ。」
エジプトの例
先生:「古代エジプトではナイル川が毎年氾濫して境界が消えた。だから測量士が畑の広さを測り直した。
たとえば長方形なら“縦×横”。三角形なら“底辺×高さ÷2”。こうした公式がすでに使われていたんだよ。」
生徒D(小学生):「えっ、三角形の公式ってそんな昔からあったんですか?」
先生:「そう、今の教科書に出てくる公式が、すでに3000年以上前にパピルスに書かれていたんだ。」
メソポタミアの例
先生:「バビロニアでは、粘土板に台形や円の面積を計算した記録が残っている。
彼らはπを3.125と近似して円の面積を出していた。つまり“面積”は土地だけでなく、天文学や建築にも関わっていたんだ。」
生徒E(高校生・歴史好き):「へえ、円までやってたんだ。面積って、文明そのものを支える技術なんですね。」
先生:「その通り。“面積を測る”ことが、社会の秩序と発展を支えていたんだよ。」
面積の意味
先生:「面積は単なる数字じゃない。そこには“人々の生活”が反映されている。
•農夫にとっては収穫の目安。
•役人にとっては税の基準。
•神官にとっては祭礼の土地の規模。
だから“面積”は、ただの計算じゃなく“社会の共通言語”だったんだ。」
生徒F(中学生):「なるほど、面積ってみんなにとって意味が違うんだ。」
先生:「そう。だからこそ文明は“面積”を公式化し、誰もが同じ方法で計算できるようにしたんだ。」
授業のまとめ
先生:「今日学んだことを整理しよう。
1.面積の概念は農耕社会で生まれた。
2.エジプトでは長方形や三角形の公式が使われていた。
3.バビロニアでは台形や円の面積も計算されていた。
4.面積は生活・税・宗教を支える社会の共通言語だった。
次回は、この面積の計算に直結する“角度”の発見と天文学との関係を学ぶよ。」
放課後の気づき
授業後、子どもたちは砂の箱に棒を突き立てて、畑の区画を描いた。「ここが三角形!」「ここは長方形!」と声を上げ、広さを比べ合う。
その遊びの中で、彼らは古代の農夫と同じように「面積」を生きた知識として体験していた。