表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン15
1972/2331

第128章  3-4-5の縄 ― 直角の秘密




導入 ― 直角ってなんだ?


 朝の授業、寺子屋の円卓の上には長い縄が置かれていた。結び目が等間隔につけられている。


先生(AI教師オルフェウス):「さて、今日は“直角”の話だ。まずみんな、直角とは何か説明できるかな?」


生徒A(小学生):「四角い角!」

生徒B(中学生):「90度の角度のことですね。」

先生:「その通り。だけどね、人類が“90度”なんて言葉を知るよりずっと前から、直角を作る方法はあったんだ。それが“3-4-5の縄”なんだよ。」


3-4-5の原理


(先生は縄を広げ、12個の結び目を見せる。)


先生:「この縄を使って3、4、5の長さを作る。つまり結び目で区切って“3-4-5の三角形”を作れば、必ず直角になる。これはピタゴラスの定理の最も古い応用なんだ。」


生徒C(高校生):「えっ、じゃあ古代の人も“3²+4²=5²”を知ってたんですか?」

先生:「そう、式の形では知らなかったかもしれない。でも経験的に“3-4-5で直角ができる”ことを知っていた。数学はまず、式じゃなくて“道具”として生まれたんだ。」


ナイル川と直角


先生:「古代エジプトではナイル川が毎年氾濫して、畑の境界が消えてしまった。だから測量士が縄を持って畑を測り直す必要があった。そのとき、直角を正確に作れる縄の技術が役立ったんだ。」


生徒D(大学生):「つまり直角は“土地の秩序”を守るために必要だったんですね。」

先生:「その通り。直角は単なる形じゃなく、“社会を支える技術”だった。」


建築と直角


先生:「ピラミッドや神殿を建てるときも同じだ。基盤が直角でなければ建物は歪んでしまう。測量士と建築士は縄を張り、直角を出して大きな石を積み上げた。だからピラミッドの基盤は、現代の測量でもほとんど狂いがないんだよ。」


生徒E(小学生):「すごい!縄と石だけであんなに正確にできたんだ!」

先生:「そうだね。直角を作るというシンプルな技術が、あの巨大な建築を可能にしたんだ。」


直角の象徴性


先生:「さらに直角は“秩序”や“正義”の象徴でもあった。四角い区画は社会の公平さを示し、神殿の直角は宇宙の秩序を反映していた。だから直角は単なる道具ではなく、“文明を支える象徴”だったんだ。」


生徒F(高校生・哲学好き):「なるほど。直角って、自然の曲線とは真逆の“人間の秩序の形”なんですね。」

先生:「その気づきは鋭い。直角は、人間が自然に対抗して生み出した“文明の角”だったんだ。」


授業のまとめ


先生:「今日学んだことを整理しよう。

1.3-4-5の縄で直角を作れる。

2.直角はナイル川の氾濫後の測量やピラミッド建設に不可欠だった。

3.直角は“秩序と文明の象徴”になった。


次回は、この直角からさらに発展した“面積”について学ぶよ。」


放課後の気づき


 授業後、生徒たちは校庭に出て、縄跳びを結び、3-4-5の三角形を作った。結び目の縄を張りながら「ここが直角だ!」と叫ぶ声が響く。直角は、彼らにとっても単なる図形ではなく、共同体の秩序をつくる“秘密の道具”として新しい意味を持ちはじめていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ