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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン15
1922/2187

第80章 イルカとゾウの数感覚




 新寺子屋の教室に、先生は二枚の大きな写真を貼った。ひとつは水面からジャンプするイルカの群れ、もうひとつは草原を行進するゾウの群れだ。


「さて今日は、“群れをなす哺乳類の数感覚”について学ぼう。イルカとゾウ、どちらも高度な社会性を持つ動物だ。そして、彼らの数の使い方は人間にとても近い。」


イルカの数感覚


 先生はイルカの写真を指差した。

「イルカは非常に賢い動物だ。道具を使ったり、複雑な音でコミュニケーションしたりする。だが特に重要なのは、仲間の数を把握する力だ。」


 ユイが手を挙げる。

「仲間の数を数えるって、どういうことですか?」


「例えば、5頭の群れで狩りに出るとする。イルカは“今は5頭そろっているか”を常に意識している。1頭でも欠けると、群れは戻って探しに行くんだ。つまり“期待している数”と“実際の数”を照合している。」


 ケンが驚いた顔をした。

「それって、人間が“クラスに全員いるか”を点呼するのと同じですね!」


「その通り。さらに研究では、イルカは人間の指示で“2つの物を持ってこい”といった課題もこなせる。つまり数を社会的協力の中で使えるんだ。」


ゾウの数感覚


 先生はもう一枚の写真を示した。

「ゾウも同じだ。群れは母系社会で、家族の絆がとても強い。ゾウの母親は、自分の子や仲間の数を正確に把握している。」


 ユイが首をかしげる。

「どうしてそんなことが必要なんですか?」


「ゾウの群れは長い旅をする。子どもが一頭でもいなくなれば命に関わる。だから母ゾウは、常に“誰がいるか、何頭いるか”を確認しているんだ。」


 先生は黒板に「7頭の群れ → 6頭になれば異常」と書いた。

「実験では、スピーカーから“仲間の声”を流すと、ゾウは群れの人数と合わないことに気づく。つまり、彼らも“数的不一致”を敏感に察知できるんだ。」


社会性と数のつながり


 ここで先生は二つの写真の間に大きな円を描き、中心に「社会性」と書いた。

「イルカもゾウも、“仲間が何頭いるか”を数える。これは生き延びるために必須なんだ。つまり、数は社会性に根ざしている。」


 ケンがうなずいた。

「なるほど……タコみたいに一匹で生きる動物には、そういう必要がないんですね。」


「その通り。社会性の高い動物は、仲間の数や敵の数を常に意識する。だから数概念が進化しやすいんだ。イルカやゾウはその代表例だ。」


体験課題


 先生は教室の生徒を五人前に呼び出した。

「ここに5人が並んでいるな。さあ、みんなで目を閉じてごらん。」


 先生は静かにユイを列から抜けさせた。

「さて、目を開けて。何か気づくか?」


「4人しかいない!」と一斉に声が上がる。


「そう、君たちも群れの数を把握している。イルカやゾウは、これを日常的にやっているんだ。」


結び


 授業の最後、先生は黒板に大きくまとめを書いた。

•イルカ:狩りや遊びで仲間数を点呼。数を協力に使う。

•ゾウ:群れの成員を常に確認。数的不一致を察知。

•共通点:社会性が高いからこそ、数概念が発達した。


「つまり、数はただの計算の道具じゃない。仲間と共に生きる力なんだ。人間が数を発展させたのも、社会性が極めて高いからだと言える。」


 窓の外では、渡り鳥の群れが列を組んで飛んでいった。子どもたちはその姿を見上げながら、自然界の数の力を改めて感じ取っていた。


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