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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン1
186/2311

第102章:闇からの復讐者


そうりゅうが沖縄を出港し、時空の歪みが検知された海域へと静かに針路を取っていた頃、その巨体を漆黒の闇に溶け込ませるように、もう一隻の潜水艦が、深海で息を潜めていた。それは、アメリカ海軍のバラオ級潜水艦「デビルフィッシュ」。ロナルド・レーガンを無力化された仇を討つべく、密かにそうりゅうを追尾していたのだ。


艦内は、青白い計器の光と、静かな機器の稼働音だけが響き、張り詰めた緊張感が支配していた。ソナー員は、ヘッドホンから伝わる微細な音に全神経を集中させている。ディスプレイには、遠くを航行するそうりゅうの微かなスクリュー音が、**長距離聴音機パッシブソナー**によって正確に捉えられていた。当時のソナーは、現代のような精密な画像は表示できないが、熟練のソナー員であれば、音紋から艦種を特定することも可能だった。


「艦長、目標、日本の潜水艦**『SORYU』**。依然として我々の探知範囲内。音紋に異常なし。特異点海域への進入を確認」ソナー員が、冷静に報告した。


「よし」デビルフィッシュ艦長は、冷徹な目でディスプレイを睨んでいた。彼の脳裏には、推進器を破壊され、ビーチに座礁させられたロナルド・レーガンの姿が焼き付いていた。未来の「同盟国」からの、あまりにも屈辱的な攻撃。その復讐を果たすため、彼は、そうりゅうが時空の歪みによって無防備になる瞬間を、虎視眈々と狙っていたのだ。


そうりゅうが、タイムスリップポイントである、歴史上大和が轟沈した海域に到達し、減速を始めた。大和からの海上自衛隊員移乗のため、あるいは、時空の歪みの兆候をより正確に捉えるためだろう。デビルフィッシュ艦長は、その瞬間を待っていた。


「艦長、目標が減速を開始しました。深度を上げている模様です!」


「やはりな」デビルフィッシュ艦長は、不敵な笑みを浮かべた。「浮上停船する気だ。好都合だ。ここまでよく我慢したな、諸君。ロナルド・レーガンの仇を討つ時が来た」


闇からの奇襲

「全魚雷発射管、注水開始!」デビルフィッシュ艦長の号令が、艦橋に響き渡る。


「注水開始!」兵装士官の声が続く。重く鈍い水の流れる音が、艦内を満たしていく。


「注水完了!内外圧均等!」


「発射管、扉開放!」


「発射管扉、開放よし!」


「目標深度、そうりゅうの潜望鏡深度下。距離3000ヤード(約2700メートル)。魚雷はMk-14。全システムにデータ入力、最終確認!」


兵装士官の指示が矢継ぎ早に飛ぶ。ディスプレイには、そうりゅうの艦影を正確に捉えたターゲットロックが表示される。Mk-14魚雷は、当時の米海軍が誇る主力魚雷であり、その威力は絶大だった。


「目標、SORYU。航行不能を狙う。スクリューシャフト及びラダー(舵)を狙え!」デビルフィッシュ艦長は、冷静な口調で指示を続けた。破壊が目的ではない。復讐と、そして無力化。


「了解!目標ロック!発射準備完了!」


艦内は、張り詰めた静寂と、冷徹な復讐の念に包まれていた。ロナルド・レーガンへの屈辱的な一撃の代償を、そうりゅうに払わせる時が来たのだ。


「発射!チューブ1、ファイアー!」


デビルフィッシュ艦長の号令が響き渡ると、重い衝撃が艦体を揺らした。圧縮空気が魚雷を押し出し、魚雷発射管から轟音と共に水中に放たれる。


「魚雷発進!」兵装士官の声が報告した。


暗い深海を、Mk-14魚雷が静かに、しかし凄まじい速度でそうりゅうへと向かっていく。それは、未来からの介入者に対する、過去からの、そして現在のアメリカ海軍からの、無慈悲な復讐の一撃だった。そうりゅうは、自分たちが追跡されていることに気づいていない。無防備な状態での奇襲攻撃。果たして、そうりゅうは、この闇からの死神の一撃を回避できるのか。

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