表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン12

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1659/3599

第123章  グローバル化と災厄



 視界に現れたのは、2000年代の初頭。インターネットの光が街を覆い、携帯電話が人々の手に輝いていた。株式市場は再び熱狂に揺れ、グローバル資本の波が日本を飲み込んでいく。その光の裏に、やがて深い影が潜んでいた。


 AIが低く告げる。

 《失われた時代を抜け出そうともがく日本。だがグローバル化と災厄が、その歩みを試し続けました》


三井の視点 ― ITバブルの熱と崩壊


 三井悠人の目の前には、2000年頃の証券会社のディーリングルームが広がった。

 モニターに映るのは「インターネット関連株」。新興企業の株価は青天井のように上がり、若い投資家たちは歓声を上げていた。

 「この会社、社員十人でも時価総額は数千億だ!」

 「ネットが世界を変える!」


 だがその熱狂は長くは続かなかった。2001年、株価は暴落し、証券会社のフロアは沈黙に包まれた。

 「金が、煙のように消えた……」

 顔を覆う投資家の姿に、悠人は震えた。

 「祖先が築いた“信用”は、またも欲望にかき消される。形を変えて、同じ過ちが繰り返される……」


三菱の視点 ― リーマンショックの衝撃


 岩崎達哉の視界には、2008年のニューヨークが映った。リーマン・ブラザーズのビルの前で社員たちが段ボールを抱え、無言で去っていく。ニュース速報が世界を駆け巡り、東京市場も混乱に陥った。


 三菱系の銀行は国際金融に深く関与しており、取引先が次々と倒れていく。会議室では幹部が声を荒げていた。

 「損失は数千億にのぼる。資本注入なしでは持たん!」

 社員はただ頭を垂れ、指示を待つしかなかった。


 達哉は胸を掴まれるように痛んだ。

 「祖先が海を渡って築いた交易は、いまや国際金融という無形の嵐に翻弄されている……」


住友の視点 ― 東日本大震災の衝撃


 住友美咲の視界は、2011年3月の東北に切り替わった。地震と津波が街を飲み込み、瓦礫の山と化した町に冷たい風が吹いていた。

 「助けてくれ!」「家族がまだ……!」

 絶望の声が響く中、住友系列の電力会社や化学工場も被災し、地域全体が機能を失っていた。


 現場では、ヘルメットをかぶった若い社員が必死に復旧作業を進めていた。

 「送電線をつなげ! 少しでも電気を!」

 泥にまみれた手で工具を握り、彼らはただ必死に働いた。


 美咲は涙をこらえた。

 「祖先の技術は時に人を傷つけた。けれど、今ここでは命を繋ぐためにある。これこそが“技術の使命”だ」


三つの交差 ― 災厄と市民


 視界に映ったのは、避難所の体育館。毛布に包まれた人々が肩を寄せ合い、冷たい床で夜を過ごしている。

 「企業がどうとか、財閥がどうとか、そんなことは関係ない。ただ明日を生き延びる力がほしい」

 老人の呟きは、三人の胸に深く刻まれた。


 AIの声が響く。

 《グローバル化の嵐も、自然の災厄も、人の営みを翻弄しました。財閥の末裔も一市民として、ただその波に呑まれる存在にすぎなかったのです》


次章への予兆


 視界が揺らぎ、2010年代の光景が浮かんだ。スマートフォンを手にした若者たち、SNSの画面、そして拡散する情報の渦。

 AIが告げる。

 《次に訪れるのは情報化と格差の時代。名は忘れられ、富は再び偏在し、子孫たちは新しい現実に直面します》


 三人は目を閉じ、次の時代を受け止める覚悟を固めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ