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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン1
150/2046

第75章 深海からの警告


その頃、ロナルド・レーガン艦長室では、スプルーアンス大将とウェルズ艦長が、未だ未来からの情報について議論を交わしていた。


その静寂を破ったのは、唐突に鳴り響いた艦内通信のブザーだった。 「艦長!緊急無線入電です!未確認信号、発信元不明!」通信士の焦った声が、艦長室に飛び込んできた。


ウェルズ艦長は、その報告に目を見張った。未確認信号?この時代の無線で、ロナルド・レーガンに直接コンタクトを取れる艦など、存在しないはずだ。


「発信源は?」ウェルズは鋭く問い返した。

通信士の声は、さらに驚愕に満ちていた。「それが…**本艦の真後ろ、およそ2000ヤード(約1800メートル)、深度50メートルからの発信です!**ソナーはウェーキで何も探知していません!」


その言葉に、ウェルズの顔色が変わった。ロナルド・レーガンの真後ろ、しかもウェーキのブラインドスポットにある海面下50メートル。そこは、ソナーの死角であり、潜水艦が最も隠密に行動できる場所だ。そして、何よりも、そこから無線通信が来るなど、彼らの技術をもってしても極めて困難なことだった。


スプルーアンス大将も、この報告に驚愕を隠せない。彼の知る限り、この深度から無線発信が可能な艦艇は存在しない。「馬鹿な!そんなことが可能なはずがない!」スプルーアンスの声が、艦長室に響いた。


ウェルズは、スプルーアンスの驚きをよそに、冷静に指示を出した。「直ちにスピーカーに繋げろ!そして、発信元を特定しろ!」


通信士が操作すると、艦長室に奇妙な静寂が満ちた。そして、スピーカーから、ざらついたノイズの向こうに、聞き慣れない、しかし明確な日本語が聞こえてきた。


「…こちら、海上自衛隊潜水艦そうりゅう、艦長だ」


ウェルズの表情は、完全に硬直した。海上自衛隊潜水艦、そうりゅう。それは、彼らの知る未来の、日本の同盟国の艦艇だ。そして、彼らが、ロナルド・レーガンの死角に潜んでいる。まさか、潜水艦がここまで接近していたとは。


そうりゅう艦長の声は、ノイズ混じりながらも、威厳に満ちていた。 「ロナルド・レーガン艦長に告げる。沖縄への侵攻を即時中止せよ。そして、貴艦の原子炉を直ちに停止せよ」


その要求に、ウェルズ艦長は息を呑んだ。沖縄への侵攻中止はまだしも、原子炉停止。原子力空母の原子炉を一度緊急停止した場合、再稼働には専門技術者チームによる数週間から数ヶ月にも及ぶ厳密な点検と手続きが必要となる。それは、ロナルド・レーガンが、事実上、作戦能力を完全に喪失することを意味する。そして、何よりも、ウェーキの中に潜む見えない敵が、なぜその要求をするのか。それを拒否した場合に何が起こるのか。


スプルーアンスは、信じられないという顔でウェルズを見た。「原子炉停止だと?何を馬鹿なことを…!」彼の顔は、怒りと困惑で歪んでいた。


ウェルズは、冷や汗が背中を伝うのを感じていた。彼は、そうりゅうが魚雷発射準備を完了していることを、直感的に悟った。未来の兵器が、目前の「同盟国」の艦艇に向けられているという、究極のジレンマ。


そうりゅう艦長の声が、再びスピーカーから響き渡った。 「これは警告ではない。要求だ。あなた達に、選択の余地はない。沖縄への攻撃を即時中止し、原子炉を停止せよ。さもなくば…」


その言葉の続きはなかった。しかし、その沈黙は、さもなくば魚雷が発射される」ことを示していた。



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