第25章 結晶の意義をめぐる対立
ここで議論は白熱した。
マーカスは冷徹に言った。
「私は結晶の存在有無を調べること自体に異論はない。ただし、調査のリスクが“存在しないことを確認するため”に見合うのか、疑問に思う。」
佐久間遼が静かに返す。
「だが、俺たちが命を懸けるのは、結晶の有無そのものじゃない。歴史を確かめるためだ。もし不在だったとしても、その事実が将来の仮説を補強するなら、十分に意味がある。」
ラファエルは挑発的に笑った。
「私は存在を願っている。結晶があれば、人類進化は偶然ではなく“外部からの影響”によって方向づけられたという証拠になる。それは生物学にとって革命だ。」
スーザンは冷静に結論めいた言葉を口にした。
「結晶が出ても、出なくても、科学にとってはどちらも価値がある。だから調査は必須。ブルー・チャンバーは“比較実験”の場なのです。」調査の必然性
アリヤ博士は全員の視線を受け止め、静かに締めくくった。
「結晶があれば、新たな進化モデルを構築できます。なければ、局地的な進化の多様性を説明できます。どちらに転んでも、我々は前に進める。ブルー・チャンバーは人類史の検証場として、避けて通れない。」
会議室に重い沈黙が落ちた。だがその沈黙は迷いではなかった。
それぞれが心の中で、リスクと意義を秤にかけながらも、答えはすでに出ていた。




