第58章 米軍沖縄上陸
沖縄西海岸、ビーチ。海自の火力支援が途絶え、座礁艦隊の砲台も沈黙したビーチに、ロナルド・レーガンからのLCAC(エアクッション型揚陸艇)とAAV-7(水陸両用装甲車)が、従来のLSTを遥かに凌駕する速度で殺到する。彼らは、もはや何の抵抗も受けずに、白い飛沫を上げながらビーチへと殺到していく。
「いずも」艦内では、佐久間機関科先任曹長をはじめとする「そうりゅう」からの転属者たちが、陸上戦闘員として配置されていた。彼らは、簡易な陣地から米軍上陸部隊への肉薄攻撃を試みるが、上陸に成功したM1エイブラムスの機関砲掃射が彼らを容赦なく襲う。
一人の隊員が、対戦車無反動砲を構えたまま、炎に包まれて倒れる。。別の隊員は、エイブラムスの主砲によって、生きたまま、肉片と化す。
指揮系統は寸断され、組織的抵抗は限界に達っしていた。。艦体は燃え盛り、もはやかつての船の姿はなかった。
牛島守備隊の九四式山砲や重機関銃が、散発的火を噴く。地を這うような弾幕がM1エイブラムス戦車に多数命中するが、砲弾は硬質な装甲に弾かれ、火花を散らすだけだ。
「司令!弾かれます!歯が立ちません!」砲兵の悲鳴に近い報告が、地下壕に響き渡る。轟音と共に砲弾が着弾し、土煙が上がるが、M1エイブラムスは微動だにしない。その履帯が、沖縄の赤土を無慈悲に踏み砕いていく。
M1エイブラムスの主砲が火を噴き、日本軍のトーチカがコンクリートの破片をまき散らして吹き飛ぶ。火炎放射器部隊がその後に続き、洞窟陣地の奥深くまで灼熱の炎をねじ込む。隠れていた日本兵が、皮膚を焦がしながら転がり出て、絶叫と共に倒れ伏す。
ビーチには、LCACから次々と米軍海兵隊員が展開し、M4A3シャーマン戦車までもが上陸を開始していた。海自の簡易地雷が爆発し、AAV-7の履帯を吹き飛ばすこともある。しかし、その損害は、圧倒的な物量に対しては微々たるものだった。
牛島守備隊の兵士たちは、肉薄攻撃を試みる。手榴弾を抱え、銃剣を構えて戦車に飛びかかる。だが、M1エイブラムスの同軸機銃が火を噴き、彼らの体をズタズタに引き裂く。
一人の若い兵士が、戦車の履帯の下に滑り込もうとした瞬間、弾丸が彼の頭を貫き、脳漿がアスファルトに飛び散る。別の兵士は、火炎放射の炎を浴びて全身が炎上し、数歩走り続けた後、黒焦げの塊となって崩れ落ちた。
海岸線は、たちまち死体と瓦礫の山と化した。折れた銃剣、血に濡れた日の丸の鉢巻き、そして海兵隊のヘルメットが散乱している。潮の香りに混じって、焦げ付く肉の匂いと、鉄錆の匂いが鼻を衝く。
米軍がビーチを突破し、沖縄本島への陸上防衛線が堰を切ったように決壊し始める。戦場の現実は、あまりにも厳しく、あまりにも血生臭かった。