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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン1
126/2364

第57章 炎の絨毯

「いずも」のSeaRAM、CIWSが、飛来するミサイルや航空機への迎撃を続ける。砲身は熱を帯びて赤く光り、炸薬の匂いが艦橋にまで漂ってくる。鋼鉄が軋むような音と共に、ミサイルが連続で発射される。


だが、いくら撃っても敵の攻撃は止まない。「弾薬切れ!目標追尾不可!」オペレーターの悲痛な声が響き、システムが沈黙していく。ミサイル発射機は空になり、機関砲は沈黙したまま、虚空を見上げている。


電子戦士官の三条は、最後の電子妨害を試みるが、グラウラーの圧倒的な電磁波パワーに押し潰され、「いずも」の通信機器から火花が散る。


「通信途絶!艦橋、通信不能!」彼女の叫びが、爆音にかき消された。コンソールに手を置いたまま、三条は顔を歪め、指先が血で汚れる。火花で飛んだ破片が彼女の頬をかすめ、一筋の血が流れた。


直後、CIWSの防御網をすり抜けたF/A-18のJDAM直撃弾が、「いずも」の飛行甲板に着弾した。ドォオォン! 轟音と共に鋼鉄が爆ぜ、炎と黒煙が空高く舞い上がる。爆風が艦橋を襲い、ガラスが砕け散る。破片が飛び散り、複数のオペレーターが血を噴き出して倒れる。


応急指揮所へと走る乗員たちの中に、負傷者が次々と倒れる。艦内通路は、破壊された配管からの蒸気と、焦げ付く匂いに満ち、呻き声と怒号が飛び交う。壁には、血の手形がいくつも残されている。


「むらさめ」の座礁地点では、F/A-18の連続攻撃を受け、艦体が大きく損傷していた。複数のJDAMが直撃し、火災が艦内を拡大していく。艦橋は半壊し、通信アンテナはぐにゃりと曲がっていた。機関部にも被弾し、爆発が誘爆する。甲板にいた救護班員が、爆風で吹き飛ばされ、炎上する残骸と共に海へと転落していく。


「むらさめ」の一人の若い機関兵が、腹部を抱えて倒れ込む。彼の視界は急速に霞み、最後の瞬間に彼が見たのは、空に立ち上る黒煙と、友の悲痛な叫び声だった。


渡会艦長は、無線で「むらさめ」艦長の状況報告を必死に聞こうとするが、ノイズと爆音にかき消されて聞こえない。そしてついに通信が途絶した。彼の顔には、苦渋と絶望が入り混じっていた。


米軍艦載機は、防御能力を失った「いずも」と「むらさめ」に対し、低空からの機銃掃射やロケット弾攻撃を繰り返す。機銃弾が甲板を抉り、火花を散らす。飛行甲板や艦橋にいた海自乗員は、無防備に晒され、次々と血を流して倒れていく。


ある者は頭を撃ち抜かれ、ある者は胸を貫かれ、瞬く間にその命を散らす。鮮血が熱い甲板に広がり、ケロシンの焦げ臭い匂いに混じって鉄錆の匂いが鼻をつく。


「いずも」応急指揮所。床には血溜まりが広がり、壁には破片が突き刺さる。医務員が、うめき声を上げる負傷者の手当てを必死に続けるが、物資も人員も圧倒的に不足している。


「止血帯!止血帯はまだか!」医務員の叫び声が響く。山名三尉は、冷静さを保とうとするが、目の前のモニターに映る損害報告(DEAD: XX, WOUNDED: XXX)に、唇を噛み締める。


彼の隣では、通信士官が血を流して倒れていた。彼の制服は血で真っ赤に染まっている。三条は、次々と沈黙していくレーダーや通信機器の表示に、最後の電子妨害を試みるが、もはやその効果は限定的であった。


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