表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン9

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1254/3615

第57章 存在の帰結 ― 人類は誰の子か



夕暮れ。湖の外が薄紫に染まる中、議長が最後の問いを提示する。

「もし未来に私たち自身が“生命の種”を宇宙へ撒くなら、どうしますか?」


コルテスが答える。

「三つの方法があります。①化学物質を撒き環境に任せる。②設計済みの遺伝子を送り込み、知性が生まれやすいよう仕組む。③物質ではなく、数学や音楽のような普遍的情報を送り、受け手が自力で解釈する」


ハインリヒが首を振る。

「②は強制的すぎる。受け手の自由を奪いかねません。倫理的な問題が大きい」


哲学者レナーテが加える。

「③は美しいが、文明が未発達なら受け取れない。与えすぎれば傲慢、与えなければ冷酷。境界は難しい」


文化人類学者の宗田が提案する。

「最善は“翻訳可能性”を残しつつ、相手の自律を尊重すること。つまり、数学や物語のような“共通の枠組み”を薄く提示するだけにとどめる」


宇宙物理学者ラホールが銀河の映像を映し出す。

「私たちが誰の子かは証明できないでしょう。しかし、知識を広げ、未来を考える知性を持つ文明は、結果的に似てくるのです」


三島が結んだ。

「今日一日を見て気づいたことがあります。我々は議論の進め方、異なる立場への敬意、理解を深める会話の作法で“似ている”。もし頒布者がいたなら、きっと同じように集まり、同じように対話したはずです」


議長が総括する。

「形は違ってもよい。しかし知性の本質——理解し、対話し、未来を共有する力——そこにこそ“似る”が宿る。人類は誰の子かは分からない。だが今日ここで、似るとは何かを少しだけ掴んだはずです」


会場に長い拍手が響いた。窓の外の湖面に街灯が点り始め、議論は次回への約束と共に幕を閉じた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ