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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン1
117/2078

第50章 深海の影:牙を研ぐ潜水艦


1945年6月下旬。マリアナ諸島東方海域の深海。そこは、太陽の光も届かない、漆黒の静寂に包まれた世界だった。そうりゅう型潜水艦「そうりゅう」は、AIP(非大気依存推進)システムによる極限の静音潜航を維持し、ほとんど音もなく深海を滑っていた。



「水測長、目標の音紋は?」竹中艦長が問うた。「艦長、目標音紋、複数捕捉。スクリューノイズ、高速回転。複数艦艇の音紋が混在しています。駆逐艦のソナー探信音を確認…断続的ですが、アクティブソナーです」。石倉の声には、確かなものがあった。画面には、特徴的な複数の音紋が浮かび上がっている。それは、高速で航行する大型艦と、その周囲を警戒する小型艦艇の音紋だった。


「駆逐艦の数と種類を特定せよ。」竹中艦長が指示する。

「解析中…駆逐艦らしき音紋、二隻。フリゲート艦らしき音紋、一隻。いずれも高速巡航中。そして…来ました。大型艦の音紋。重巡洋艦のものと一致します。間違いありません、インディアナポリスです!」石倉の声に、わずかな興奮が混じった。


「そうりゅう」は、音もなく敵艦隊へと迫っていく。竹中艦長は、インディアナポリスとその護衛艦艇の針路、速度、そして対潜哨戒パターンを正確に把握していた。史実では単独航行であったインディアナポリスに、今回は最新鋭の駆逐艦4隻とフリゲート艦1隻が護衛としてついていた。


「本艦、深度100メートルを維持。敵駆逐艦のソナー探知圏外より接近する。静粛潜航を徹底せよ。機関長、微速前進を維持」。


伊号第五十八潜水艦(I-58)もまた、静かに目標海域へと接近していた。橋本以行中佐が指揮する伊58は、その優れた静音性能と、九五式酸素魚雷という強力な「牙」を持つ。しかし、当時の潜水艦のソナーでは、遠距離で、複数の敵艦隊の音紋を正確に特定することは困難だった。


「伊58へ。こちら『そうりゅう』。目標艦隊、前方30度、距離20海里。重巡インディアナポリス、駆逐艦二、フリゲート一。敵駆逐艦のソナーはX周波数帯、探知パターンは扇形。右舷前方警戒が薄い。現在の針路を維持し、本艦の後方を追尾せよ。魚雷発射準備」。


橋本中佐は、深く頷いた。


「伊58のソナーに目標音紋、微弱ながら確認。司令、本艦、発射準備可能!」「よし。全魚雷発射管、発射準備。目標インディアナポリス。


インディアナポリスとその護衛艦隊は、包囲されていることに、まだ気づいていなかった。


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