表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン1
116/2089

第50章 アニメ風

1945年6月下旬 マリアナ東方沖


太陽の光が届かない、深海。

漆黒の静寂を、ただ水圧だけが支配していた。


その闇の中を、「そうりゅう」は滑るように進む。

AIPによる極限の静音潜航。

水の壁に溶け込むように、音ひとつ漏らさない。


「水測長、目標の音紋は?」

竹中艦長の声は低い。


「複数捕捉。スクリューの高速回転。駆逐艦のアクティブソナーも断続的に確認」

石倉の声は落ち着いていたが、その響きには確かさがあった。


画面には、特徴的な音紋。

大型艦。そして、その周囲を囲む小型艦艇。


「駆逐艦の数と種類を特定せよ」

「解析中……駆逐艦二、フリゲート一。いずれも高速巡航中。そして――」

石倉の声が僅かに揺れた。

「来ました。大型艦の音紋。重巡……インディアナポリスです!」


艦内に、静かな緊張が走る。


「深度100を維持。敵駆逐艦の探知圏外から接近する」

竹中の指示は鋼のように揺るぎなかった。

「静粛潜航を徹底せよ。機関、微速前進」


「そうりゅう」は音もなく獲物へと忍び寄る。

その先に、史実を変えるべき目標がいた。


一方――。

伊号第五十八潜水艦(I-58)も、静かに海を進んでいた。

橋本以行中佐が指揮を執る。

優れた静音性能と九五式酸素魚雷。だが、当時のソナーでは遠距離の複数音紋を正確に捉えるのは困難だった。


その時、通信が入る。


「伊58へ。こちら『そうりゅう』」

竹中の声が艦内スピーカーに響く。

「目標艦隊、前方30度、距離20海里。重巡インディアナポリス、駆逐艦二、フリゲート一。ソナーはX帯。扇形探知。右舷前方が手薄。針路維持、本艦の後方を追尾せよ。魚雷発射準備」


橋本は無言で頷いた。

緊張と興奮が、艦内に伝播していく。


「伊58、音紋を微弱ながら確認」

ソナー員の声が響いた。

「司令、本艦、発射準備可能!」


橋本の目が光る。

「よし。全魚雷発射管、発射準備。目標――インディアナポリス」


獲物は、まだ自らが包囲されていることに気づいていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ