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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン1
114/2052

第49章 アニメ風

1945年4月 沖縄沖


大和と「まや」の艦影が、東の水平線に溶け込むように消えた。

その頃、ロナルド・レーガン空母打撃群は、既に臨戦態勢に入っていた。


原子力空母「USSロナルド・レーガン(CVN-76)」。

広大な飛行甲板には、途切れることのないジェットエンジンの咆哮。

ハロゲンライトが鋭い光の筋を描き、発艦準備に追われる艦載機を照らし出す。


艦橋最上層。司令官席のスプルーアンス大将は、眼下の光景を無言で見下ろしていた。

隣に立つウェルズ艦長が報告を続ける。


「大将、全機発艦準備完了。F/A-18スーパーホーネット、EA-18Gグラウラー、E-2Cホークアイ、MH-60R/S、すべてスタンバイ済み。トマホークの目標データ入力完了。攻撃開始まで、残り10分を切りました」


モニターには、沖縄本島南部の詳細な地形図。赤いマーカーが首里、シュガーローフ、摩文仁の地下壕を示す。

その一つひとつが、これから火の海となる場所だった。


飛行甲板は、怒号と轟音の坩堝。

蒸気カタパルトの爆発音が鋼鉄を震わせ、ケロシンと焦げた油の匂いが潮風に混じる。

黄色いシャツの誘導員が両腕を振り上げ、夜空に鮮やかな軌跡を描く。


スーパーホーネットの機体には、JDAM、SLAM-ER、そしてサイドワインダー。

その姿はまるで、鋼鉄の牙を剥いた獣だった。


「第1波は沖縄南部。グラウラーが通信網とレーダーを潰し、日本軍の指揮を沈黙させます」

ウェルズの声は冷徹に響いた。


スプルーアンス大将の脳裏には、沖縄戦で既に倒れた無数の兵士の顔がよみがえる。

ここで止めなければ、犠牲はさらに膨れ上がる。

「ドナルド・レーガン」が、その命綱だった。


艦内放送が鳴り響く。

「全機、発艦準備完了。残り5分」


パイロットたちはHMDを覗き込み、表示される目標情報を最終確認する。

ノズルから吐き出される排気が甲板を揺らし、蒸気カタパルトの弁がシューッと白煙を噴いた。


「E-2Dが彼らのF-35Bを捕捉する。我々の空は、我々が支配する」

ウェルズの報告に、大将は視線を外へ移す。


「沖縄を沈黙させろ、ウェルズ」

声は低く、だが鋭かった。

「あの島から、これ以上、我々の兵士を死なせるわけにはいかない」


艦内放送が再び告げる。

「発艦まで、残り1分」


カタパルトオペレーターの緑のライトが点灯した。

パイロットはスロットルを押し込み、機体は全身を震わせる。

轟音が極限まで高まり、鋼鉄の甲板が唸った。


「発艦!」


最初のスーパーホーネットが、蒸気の爆発力に押し出され、闇夜へと弾き飛ばされる。

アフターバーナーの炎が黒い空を切り裂いた。

続けざまに、次の機体、また次の機体が飛び立つ。


米軍による三度目、そして最後の容赦なき「力」の行使が、今、始まった

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