第49章 アニメ風
1945年4月 沖縄沖
大和と「まや」の艦影が、東の水平線に溶け込むように消えた。
その頃、ロナルド・レーガン空母打撃群は、既に臨戦態勢に入っていた。
原子力空母「USSロナルド・レーガン(CVN-76)」。
広大な飛行甲板には、途切れることのないジェットエンジンの咆哮。
ハロゲンライトが鋭い光の筋を描き、発艦準備に追われる艦載機を照らし出す。
艦橋最上層。司令官席のスプルーアンス大将は、眼下の光景を無言で見下ろしていた。
隣に立つウェルズ艦長が報告を続ける。
「大将、全機発艦準備完了。F/A-18スーパーホーネット、EA-18Gグラウラー、E-2Cホークアイ、MH-60R/S、すべてスタンバイ済み。トマホークの目標データ入力完了。攻撃開始まで、残り10分を切りました」
モニターには、沖縄本島南部の詳細な地形図。赤いマーカーが首里、シュガーローフ、摩文仁の地下壕を示す。
その一つひとつが、これから火の海となる場所だった。
飛行甲板は、怒号と轟音の坩堝。
蒸気カタパルトの爆発音が鋼鉄を震わせ、ケロシンと焦げた油の匂いが潮風に混じる。
黄色いシャツの誘導員が両腕を振り上げ、夜空に鮮やかな軌跡を描く。
スーパーホーネットの機体には、JDAM、SLAM-ER、そしてサイドワインダー。
その姿はまるで、鋼鉄の牙を剥いた獣だった。
「第1波は沖縄南部。グラウラーが通信網とレーダーを潰し、日本軍の指揮を沈黙させます」
ウェルズの声は冷徹に響いた。
スプルーアンス大将の脳裏には、沖縄戦で既に倒れた無数の兵士の顔がよみがえる。
ここで止めなければ、犠牲はさらに膨れ上がる。
「ドナルド・レーガン」が、その命綱だった。
艦内放送が鳴り響く。
「全機、発艦準備完了。残り5分」
パイロットたちはHMDを覗き込み、表示される目標情報を最終確認する。
ノズルから吐き出される排気が甲板を揺らし、蒸気カタパルトの弁がシューッと白煙を噴いた。
「E-2Dが彼らのF-35Bを捕捉する。我々の空は、我々が支配する」
ウェルズの報告に、大将は視線を外へ移す。
「沖縄を沈黙させろ、ウェルズ」
声は低く、だが鋭かった。
「あの島から、これ以上、我々の兵士を死なせるわけにはいかない」
艦内放送が再び告げる。
「発艦まで、残り1分」
カタパルトオペレーターの緑のライトが点灯した。
パイロットはスロットルを押し込み、機体は全身を震わせる。
轟音が極限まで高まり、鋼鉄の甲板が唸った。
「発艦!」
最初のスーパーホーネットが、蒸気の爆発力に押し出され、闇夜へと弾き飛ばされる。
アフターバーナーの炎が黒い空を切り裂いた。
続けざまに、次の機体、また次の機体が飛び立つ。
米軍による三度目、そして最後の容赦なき「力」の行使が、今、始まった