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第47章 「特攻」の空:交錯する意志
1945年6月、沖縄沖。米軍の厳重な多層包囲網を奇跡的に突破した戦艦大和とイージス艦「まや」は、日本本土への針路を北に取るべく、広大な太平洋上を静かに、しかし最高速度で航行していた。夜明けを迎え、空は群青から淡い水色へと移り変わり、海面には朝の光がまばゆく反射している。
「まや」のCIC(戦闘情報センター)では、三条が、張り詰めた面持ちで、レーダースクリーンを凝視していた。
スクリーンの端に、低空を急速に接近してくる複数の航空機影が点滅し始めた。その速度とパターンは、通常の哨戒機や偵察機とは明らかに異なっていた。
「艦長、未確認機、超低空を高速で接近中!数機、音紋、単発レシプロエンジンの特徴を確認!」三条の声が、冷徹な空気を切り裂いた。
片倉大佐は、その眉間にわずかな皺を寄せた。
「距離、方位は?」片倉が静かに問う。
「距離10キロ、方位3-4-0より!高度、さらに急速に降下中!約100メートル!探知遅れました。」