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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン1
104/2311

第45章 アニメ風

1945年5月。沖縄戦は膠着しつつあった。海上自衛隊と旧日本海軍が決死の抵抗を続けるその裏で、ワシントンD.C.、ホワイトハウス地下作戦室には重苦しい空気が漂っていた。

未来から現れた原子力空母「ロナルド・レーガン」が、米軍傘下で沖縄本島への第三次攻撃を1か月後に開始する――。その決定がすでに下されている中での会議だった。


トルーマン大統領を中心に、空軍長官、海軍長官、そして「マンハッタン計画」の責任者たちがテーブルを囲む。沈黙は重く、時計の音だけが響く。


大統領が口を開いた。

「マンハッタン計画の進捗はどうなっている」


責任者のひとりが答える。

「順調です、閣下。すでに二発の原子爆弾が完成しております。広島と長崎への投下準備も最終段階です」


声の奥には誇りと恐怖、相反する感情が入り混じっていた。


トルーマンは視線を鋭くした。

「追加の二発はどうだ」


室内の空気が一段と張り詰める。

「テネシー州オークリッジでは、Y-12工場での電磁分離、K-25工場でのガス拡散法による濃縮が進んでおります。数万人の作業員が昼夜を問わず稼働中です」


その作業員たちの多くは、自分が何を生み出しているのかすら知らない。ただ巨大な電磁石の唸りと、絡み合うパイプの森の中で、疲弊した体を酷使していた。


別の技術者が補足する。

「ワシントン州ハンフォードのB型原子炉では、ウラン238が中性子を吸収し、プルトニウム239が生成されています。毒性が高く、強い放射線を帯びているため、化学的再処理を厳重に繰り返している状況です」


トルーマンの問いは容赦ない。

「材料が揃うのは、いつだ」


海軍長官が答える。

「あと二週間で必要量を確保できます。その後ニューメキシコのロスアラモスに搬入し、オッペンハイマー博士を中心に、ノイマン、テラー、フェルミらが設計を進めます。三発目、四発目は『ファットマン型』爆縮式プルトニウム爆弾として、一か月後には完成の見込みです」


計画はすでに限界まで加速されていた。オークリッジもハンフォードも、設備は酷使され、現場には小さな事故が頻発していた。それでもグローヴス准将の指揮のもと、全員が口を閉ざし、機密保持を最優先にして進められていた。


トルーマンの声が再び響く。

「テニアンへの搬入は」


「9月を予定しています」海軍長官が答える。「インディアナポリスを旗艦とした特別任務部隊で。最新鋭駆逐艦四隻と、フリゲート艦二隻が護衛につきます」


空軍長官が短く続けた。

「テニアンの準備はすでに完了しています」


その言葉に、トルーマンはただ静かに頷いた。表情は一切揺るがない。感情を剥ぎ取られたようなその横顔に、参謀たちは言葉を失った。


人類史上、最も破壊的な兵器が、いま確実に姿を現そうとしていた。

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