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 王宮まで連行され牢に閉じ込められると思いきや、客室に案内され後日「舞踏会に出席するよう」言われた。


 なんぞ??



 馬車で護送中ダリは、なんとか私を逃がそうとしたが、それは拒否した。


 だって鞭の練習しただけの普通の貴族だもん。野に1人で放たれたら生きていけない。


 それに逃げてダリの立場が悪化すると困る。


 というか、このために「いつでも逃げれるように」って言ってたのね。


 敵の正体がわかって少しスッキリした。


 なぜ狙われてるかは「向こうへ行けばわかる」とだけ言われた。



 それと、お荷物──夫(2年後他人)とピンクも自発的に付いてきた。








 初舞踏会の当日、私はオブシディアン辺境伯と共に会場入りした。


 左遷で有名な彼の登場に、着飾った貴族達がざわめいた。


 その中には姉もいたが、私を見るなり何処かへ消えた。



 挨拶が終わり、夫(?)とファーストダンス、ダリとセカンドダンスを踊った。


 王子に連れて来られたんじゃなければ、もう少し楽しかっただろう。うちが貧乏でドレスを仕立てられずデビュタントもしてない私は、正直ワクワクする気持ちもあった。



 ダリは遠い国の伯爵と紹介されていた。が、顔を見れば、そうじゃないとわかる。


 ともかく3日ぶりに安否を確認できて良かった。


 王宮では別室に通され、会えなかった。


 そして案の定、見知らぬ男がワインを渡してきた。


 私は夫(下僕)に命じて男を取り押さえさせ、口にワインを流し込んだ。


 男は喉を掻き毟ようにして、床でのたうった。


 私は、その頭を掴み上げ「誰に頼まれたか言えば解毒剤をやる」と凄んだ。すると第1王子を指差した。


「どういうつもりだ?! 王族を謀るとは!」


 激昂する息子を、国王が手を制す。


「もう良い。お前の杜撰な計画は筒抜けだ」


「そうだ! その男を捕縛しろ! 俺に罪を着せようなどと100年早い!」


 第1王子がダリを指差すと、衛兵はマイケルを拘束した。


「何で俺っ?!」


「お前の母がアレを殺そうとするから海外にやったのに、今度はお前が……お前が第2王子に帰国を強制して道中に刺客を放ったのも、冤罪で連行してきたのも全てわかっている」

と、国王は頭を抱えた。


「そしてオブシディアン辺境伯夫人を殺し、その犯人に仕立てるつもりであったろう。

弟の命を狙った罪でマイケルを追放とする。次の王太子は第2王子ダニエル」


 国王にそっくりなダリは、前へ進み出て頭を下げる。


 ダリの本当の名はダニエルであった。


「謹んでお受けします」


「オブシディアン辺境伯夫人。

今まで息子を支えてくれたと聞いている。

先程の勇気ある対応も良かった。

望みはあるか?」


「殿下に支えていただいたのは、私の方ですが……恐れながら、お願いがございます。

オブシディアン辺境伯との婚姻を、無効にしてください」


「婚姻を無効にしても、ダニエルとは結ばれないぞ? こやつはラナンキュラス公爵令嬢(マイケルの現婚約者)を配偶者とする」


 私は「勿論です」と頷く。私の実家では王太子の後ろ楯になれない。

 胸がズキズキするのは気のせいだ。


「ちょ、異議あり! はい! ダメ!」

と辺境伯(まだ夫)が挙手した。


「婚姻は継続してください! 2年以内に口説いて名実共に夫婦になってみせます」


 ダニエルのパートナー(何故)として会場入りしたサリー元男爵令嬢の眉間に皺が寄った。


「オブシディアン辺境伯には、王女カナエラを降嫁させる」


「お断りします!」


「辺境伯は以前、マイケル経由で降嫁を願い出ていたはずだが?」


「確かに王女殿下に懸想した時期もありましたが、私は隠れ蓑であります!

本当は、王女殿下と第1王子殿下がニャンニャンであります!」


 おい、王女が口をあんぐり開けてるぜ?


 国王の深く長い溜め息が、会場の沈黙を終わらせる。


「王女は他国の側室に出す。

オブシディアン辺境伯の婚姻は無効。

本日は、これにて解散」


「お待ちください」


 ダニエルが低く通る声で言った。


「公にしたいことがございます」


「赦す」


「そこにいるサリー・マクガレン元男爵令嬢は『命を狙われてるから助けて欲しい』とオブシディアン辺境伯家に入り込みました。

私と辺境騎士団で調査の結果、確かにそのような形跡がありました」


「そうよ! 本当に怖かったんだから!

どうせ、その女の差し金よ! 裁いてちょうだい!」

と、ラナンキュラス公爵令嬢を指差す。


「下手人は、辺境伯城を追い出された元使用人たちでした」


「ええっ?」


 続いた言葉に私は、思わず声を上げた。


 辺境暮らしの元使用人と王都から追われたピンクに接点があったとは、予想してなかった。


 ピンクが送られた修道院で出会い、意気投合したそうだ。


「実行犯は元使用人、指示役はマクガレン元男爵令嬢、計画したのは……アーリア・アメジスト伯爵令嬢」


 騎士に両脇を抱えられて姉が、陛下の御前まで連れて来られる。


「何なのよ?! 私は関係ないわ」


「これに見覚えは?」

と、ダリがルビーのネックレスを掲げる。


 姉の顔が青ざめる。


「それは……亡くなった母のです。いつの間になくなったと思ってて」


 私は、そう言って前へ進み出る。


「これはアーリア・アメジスト伯爵令嬢が、実行犯に報酬として渡したものだ」


「知らない! 私じゃない! そもそもネックレスがあんたのだって、どうやって証明するわけ?!」


「宝石を外すと台座にイニシャルが掘ってある。持ち主なら、そのイニシャルが何かわかるはず」


「それは……だったら、あんたが主犯なんでしょ?! あんたが使用人に直接渡したのよ!」


「辺境伯夫人が貴族学園に入学しなかったのは、姉のあなたが1番よく知ってるだろう。

彼女は被害相談を受けた時が、マクガレン元男爵令嬢との初対面だが?

(学園は3年制でアーリア21、マイケルとサリー19なので面識あり)

それ以前の被害は、どう説明する? 動機は何だ?


お前たちは、オブシディアン辺境伯経由で、彼の生家クウォーツ侯爵家から利益を得ようと企んだのだろう?」


 今度こそ姉は黙り込んだ。


 嘘つきでクズとは思ってたけど、想像以上だった。


「もう良い、引っ立てろ」


 陛下の声に騎士達が動いた。


「待って! 私、妊娠してます! マイケル様の子! 王家の直系よ!」

と、サリーが叫んだ。












 2年後。


「そろそろ家に入らないと、風邪ひいてしまうよ」


 オブシディアン辺境伯が来て、私の肩にストールをかけてくれた。


「もう少しだけ」

と、ダリと暮らした離れを見上げる。


「だったらマリーは、俺が連れてくよ」


 私の腕から幼児を取り上げて、母屋に連れて行った。


 今日は王都でダニエル第2王子殿下とラナンキュラス公爵令嬢の結婚式が行われる日。


 私はフッと息を吐いて、玄関へ向かう。


「さっきのって君の子?」


「え?」


 振り向くと、新郎であるはずのダニエル。


 紫がかった黒髪に紅い目。間違いない。


「……何で?」


「王太子の座と婚約者、譲ってきた。

君と一緒に食堂をやりたくて。

ダメか?」


 現実味がない。答えが見つからない。


 どうしよう? なんで?


 ダニエルは目の前で跪くと、私の薬指にリングを嵌めた。


「森で拾ってもらった時から、ずっとあなたを愛してる」



 その光景をピンクの髪を持つ幼児と、その父親が笑顔で見守っていたと知るのは、もう少し後。











□完□








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