最終章 第6話「終焉と継承」
最終章『選ばれし者たち』
第6話「終焉と継承」
魔王ザハリスの膝が、確かに地を打った。
その姿はなおも威容を保っているが、先ほどまでとは明らかに違う。
――崩れ始めている。
蒼聖剣が震える。
それは恐れではなく、応えるように……「討て」と、背中を押す振動だった。
「……ケン、行け」
カイが一歩、俺の前に出て、笑った。
「トドメは……お前しかできねえだろ」
「……ああ」
俺は深く頷いた。
その背に、レイの静かな声が届く。
「……背後、任せた」
「ありがとな、レイ」
「……うん」
リラは短く詠唱を唱え、聖なる魔力を俺に注ぎ込む。
「最後の強化魔法。“セラフィム・ブレス”――あなたに、聖なる祝福を」
「助かる」
蒼聖剣の青白い輝きが、天井を焦がすように天を突く。
俺は一歩、また一歩とザハリスへ歩を進めた。
魔王は、なおも不敵に笑う。
「これで終わりだと思うか……? 我が命が尽きようとも、混沌の源は消えぬ。闇は……必ず蘇る」
「……その時は、また誰かが立ち上がるさ」
俺は構える。
「だけど今は――お前を、超える。俺たちの力で!」
「――蒼聖剣・最終式、《光翼断界》!!!」
剣が巨大な翼のように光を帯び、天に舞い上がる。
その力はもはや一人の力ではない。
仲間と共に歩んだすべての日々、すべての戦いがこの剣に集約されていた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
剣が振り下ろされる――
大地が光に包まれ、すべての魔を断ち切るような斬撃が、ザハリスの胸を貫いた。
「ぐ……っあああああああああああああッッ!!!!」
闇が、音もなく崩れ落ちる。
ザハリスの身体は、崩れるというより――溶けるように、闇と共に消えていった。
「これが……人の、力か……」
最後の言葉とともに、魔王は完全に消滅した。
◆
静寂が訪れる。
あれだけ濃密だった魔力の圧が、嘘のように消えていた。
俺は膝をつく。
カイがすぐに肩を貸してくれた。
「……やったな」
「……ああ。やったな」
レイが近づき、小さく頷く。
「……お疲れ」
「お前もな」
リラが聖杖を杖代わりにして笑った。
「ふふ……まさか、本当に……」
「本当に倒せるなんて、思ってなかったか?」
「ううん。思ってた。だから信じた。最初から」
魔王城の空が、いつの間にか晴れていた。
崩れかけた天井から、外の空が見える。
蒼く、高い空だった。
「行こう。ここで終わりじゃない。俺たちは……」
「次の物語へ進むんだ」
◆
──こうして、魔王ザハリスとの戦いは終わった。
だが、それは「終わり」ではなく、「始まり」だった。
この世界には、まだ救われていない人々がいる。
まだ見ぬ遺跡があり、秘められた魔法があり、失われた記憶がある。
選ばれし者たちの旅は、これからも続く――




