最終章 第5話「聖剣と魔王」
最終章『選ばれし者たち』
第5話「聖剣と魔王」
魔王ザハリスの一撃を受けた俺たちは、すぐさま距離を取った。
空間が揺れる。魔力の密度が常軌を逸している。
この戦いは、いままでのどれとも違う。そう直感するには、十分すぎる始まりだった。
「っく……この距離でも、プレッシャーが重い……!」
カイが汗を拭う。
「当たれば終わり。そういう類の相手だね」
リラが冷静に分析するが、その額には薄く冷や汗が浮かんでいた。
「……でも」
レイが前に出る。その手に握られた黒の剣が、じんわりと影を揺らす。
「避けて……勝てる相手じゃない。だったら――斬るだけ」
「……ああ。やるしかない」
俺は、蒼聖剣を両手で構える。
「全力を出す。これは、命をかけるべき戦いだ」
ザハリスは玉座から歩み出る。背後の黒い魔方陣が脈動し、彼の背中に翼のような魔力の影を浮かび上がらせる。
「……それでこそ。滅ぼすに値する価値がある」
魔王の手が、ゆっくりと空に向かって掲げられる。
瞬間――雷の柱が天井から降り注ぎ、轟音と共に地を穿つ!
「来るぞッ!!」
◆
「カイ、左から!」
「おうッ! 絶対防御、展開!」
カイがその身を盾に変え、前方からの雷撃を受け止める。
「リラ、援護射撃を!」
「グラビティ・バインド!!」
リラの詠唱と共に、空間が圧縮され、ザハリスの動きが鈍る――
「今だ、レイ!!」
レイが影と共に疾走する。姿を見失うほどの速度。
「影牙・四連」
ザハリスの胸元に、四つの斬撃痕が走る。
が――
「甘いな」
彼はその場で魔力を爆発させ、レイを吹き飛ばした。
「っ……ぐ……」
レイは地を転がるが、すぐに体勢を立て直す。
「平気……次は、もっと深く、斬る」
「……流石だな、レイ」
俺は一歩、踏み出した。
「俺の番だ」
「蒼聖剣・解放――“輝焔式”!」
聖剣が青白く発光し、刃先が蒼炎を纏う。蒼聖剣の“聖なる火”が、俺の周囲の魔を焼き払う。
「覇鋼斬・改――ッ!!」
地を裂くほどの一撃を叩き込む。
ザハリスは剣で受け止めるが、その手が微かに震えていた。
「……なるほど。貴様の剣には、“神の意志”があるな」
「俺の剣は……仲間と共に選んだ剣だ」
「ならば――試してやる。果たして、その“光”が、我が“闇”に勝てるかどうか!」
魔王が再び魔力を解放する。空間が歪み、黒い雷の波動がフロア全体を包む。
「全員、後退――ッ!」
リラが急いで防壁を張るも、衝撃が早い!
全員が吹き飛ばされ、岩の瓦礫に身体を打ちつける。
「うっ……!」
視界がかすむ。頭が揺れる。それでも、俺は剣を手放さなかった。
――立たなきゃ。
俺が倒れたままでは、仲間も、希望も、何も守れない。
「……気合の鼓舞」
俺の口から、自然とスキル名がこぼれる。
蒼聖剣の力が、全員の身体に光を灯す。傷がふさがり、疲労が和らいでいく。
「もう一度、立とう。全員で――この“闇”を斬り裂くんだ!!」
カイが立ち上がる。
「おうよ! 剣気裂波ッ!!」
「双牙斬!!」
リラが魔法陣を三重に展開し、
「雷裂・連槍!!」
レイが影の中から現れ、渾身の一撃を放つ。
「影剣・断」
そして俺も――
「双牙乱舞ッ!!」
連撃、連撃、連撃――
ザハリスが初めて、膝をついた。
「……貴様ら……なぜ、それほどまでに……!」
「俺たちは、誰かに選ばれたんじゃない」
「俺たち自身が、“選んだんだ”。戦うことを。生きることを。そして――希望を、信じることを!!」
蒼聖剣が、その意志に応えるように、光を放つ。
――そして、次回、決着へ。




