最終章 第2話「神託の間」
最終章『選ばれし者たち』
第2話「神託の間」
眩い光を抜けた先――そこは、まるで時の流れから切り離されたような、静寂の空間だった。
白く輝く石柱が立ち並び、天井も壁もないのに、風もなく、すべてが沈黙していた。
ただ一つ、中央に浮かぶ巨大な水晶球だけが、脈動するように淡く光っている。
「……ここが、“神託の間”」
リラが、震える声で呟く。
「伝承にあった……創造神の記憶が残された空間。私、まさか本当に……」
リラは目を潤ませながら、水晶球へと歩み寄る。
彼女の指先がかすかに触れた瞬間、空間に響く“声”があった。
――■■■■よ。汝ら、試練を超えし者たちよ。
それは言葉ではない“意志”の声だった。
俺たち全員の脳裏に、直接流れ込んでくる。
――この世界は、幾度も滅びを迎えた。
だがそのたび、選ばれし者たちが現れ、希望の光を繋いできた。
今、再び滅びの兆しが迫る。
“魔王”の名を冠する、深き影が。
「……魔王……?」
カイが思わずつぶやく。
その名は、かつてこの世界を滅ぼしかけた存在。
けれど、すでに封印されたはずの伝説上の存在のはずだった。
――その封印は、限界を迎えつつある。
世界の秩序が歪み、古き封印がほころび始めた。
汝らが進むその先に、滅びの根源が待ち構えている。
だが、選ばれし者たちよ。汝らには光がある。
絆という名の、力がある。
“真の力”は、最後の戦いの中で目覚めるだろう。
――声が、途切れる。
水晶球がひときわ強く輝き、そして淡く消えた。
「……魔王……が、復活するってことか?」
カイの声が重く響く。
リラは眉をひそめ、静かに頷く。
「たぶん……。でも、ただの魔物じゃない。これは“存在そのものが呪い”のような……そんな存在。世界を蝕む影……」
俺たちは、ゆっくりと顔を見合わせる。
レイが、ぽつりと短く言う。
「倒す。前に、進むだけ」
その一言が、重苦しい空気を切り裂いた。
「ああ……そうだな。今さら、立ち止まる理由はない」
俺は剣を背に、静かに頷く。
道は、最奥へと続いている。
その先にあるのは――
この世界の“終焉”か、それとも“再生”か。
俺たちは進む。
希望を繋ぐ、最後の戦いへ。




