第4章 第22話「地底の門」
第4章『封印された遺跡』
第22話「地底の門」
遺跡の最奥、ザルヴァ=イーグの守っていた祭壇が崩れ落ちた後。
その奥に、さらに“階段”があった。
深く、闇の中へと続いている。
「ここ……重力も、魔力も……変だ」
レイが、短く告げた。
たしかに、空気が違う。肌にまとわりつくような、圧力のある気配。
リラが険しい顔で魔力を探る。
「……この階段は“転移陣”を兼ねてるわね。普通の構造じゃない。おそらく、第三階層は――“別空間”」
「別空間……?」
「ああ。古代の一部の遺跡は、現実と異なる“魔域”に接続されてることがある。生半可な覚悟じゃ戻ってこられないわよ」
カイが剣の柄に手をかけた。
「……なら、準備はいるな」
一度引き返し、遺跡外の拠点へ戻った俺たちは、しばし休息を取った。
ザルヴァとの激戦で全員が疲弊していたし、レイの傷も深かった。
だが彼女は、回復後も一言も文句を言わず、黙々と剣を研いでいた。
「……行く、んでしょ」
ぽつりと、そう言っただけだった。
「うん、行くよ」
俺はそう返し、全員の顔を順に見る。
そして、第三階層へと向かうことを決めた。
再び階段を降りていくと、空間が歪む。
ヴォン……!
身体が一瞬、宙に浮いたような感覚――そして、景色が切り替わった。
そこは、光なき大空洞だった。
巨大な地底湖と、石の橋。そして、対岸には巨大な“門”がそびえ立っている。
それが、第三階層への本当の“入り口”だった。
「うわ……なんだこりゃ……」
カイがぽつりとつぶやく。
門には無数の“目”のような紋様が彫られ、まるでこちらを睨んでいるかのようだった。
リラが低く息を呑む。
「……これ、封印されてた存在を“呼ぶ”ためのゲートよ。もう、完全に開きかけてる」
「ってことは、誰かがこいつを――」
「……開けようとしてる」
レイが、ぽつりと呟いた。
そのときだった。
門の前に、人影が立っていた。
フードを深く被り、片手を掲げるその人物。
その手には――見覚えのある“黒い魔石”。
「……あれ、バジリスクの……」
俺たちが倒した魔獣の魔石。あれが、何者かの手に渡っていたのか――!?
フードの男が、こちらを振り返る。
「来たか。さすがに早いな……だが、まだ儀式は終わっていない」
「お前、何者だ!」
カイが叫ぶが、男は名乗らない。ただ、手を止めずに術式を続ける。
「すまないが、君たちにはここで“終わって”もらう。邪魔だ」
次の瞬間、地底湖がざわめき、黒い影が水面から浮かび上がった。
それは――
全身が魔力でできた、異形の存在だった。
目も口もない。ただ、黒い渦がうごめき、形を保とうとしている。
「なっ……なんだこいつ!?」
「魔法生命体……いや、“未完成の召喚体”! このままじゃ、あの門が……!」
「止めるしかないな!!」
剣を構え、俺たちは異形の前に立つ。
そして、戦いが始まる。




