第4章 第19話「歪んだ階層都市」
第4章『封印された遺跡』
第19話「歪んだ階層都市」
第二階層に足を踏み入れた瞬間――俺たちは目を疑った。
建物が、逆さまに立っていた。
道路が、天井に貼り付いている。
重力すら、何かがおかしい。
「……ここ、どうなってんだ?」
カイが周囲を見渡す。
俺たちは、まるで天井に立っているかのように感じるのに、実際は“地に足が着いて”いる。
重力が“操作”されている――ただそれだけで、人間の感覚はこれほどまでに狂うのか。
リラが顔をしかめた。
「空間が、歪められてる。これは……古代魔術の応用ね。時間や重力に干渉して、物理法則を捻じ曲げる」
「こんなの、どうやって進めば……」
俺が言いかけた時、建物の隙間から“何か”が這い出してきた。
――ヒュルルルルル……カサ、カサッ。
「……クモ?」
だが、それはクモの形をした“人間”だった。
逆さまの天井に張り付き、ねじれた手足でこちらを睨みつけてくる。
「来るぞ!!」
俺が前に出て、剣を抜く。
《双牙乱舞》!
二閃の連撃が、クモ人間の脚を切り裂いた――が、奴は地面に落ちることなく、壁に跳ねて張り付く。
「移動が……縦横無尽すぎる!」
「動き、追えない……」
レイが静かに前に出て、影をまとった。
《影牙・二閃》
影の残像を生み出し、敵の動きを読み切って一閃。
クモ人間の身体が、ぶつりと裂けて崩れ落ちた。
「まだ来る!」
今度は、建物の隙間から複数のクモ人間が這い出す。
カイが前へ出た。
「ここは俺に任せろ!」
《轟剣裂破》!
剣が地面を砕き、反動で跳び上がるカイ。
空中で剣を振り下ろし、敵を串刺しにしていく。
一方、リラは後方から詠唱を開始していた。
「精霊たちよ、歪みを正し、我らに“軸”を!」
《グラビティ・バインド》
その呪文は、空間の重力を安定させ、俺たちの動きを補正してくれた。
「助かる……これで踏み込みやすい!」
数体のクモ人間を倒し、ようやく静寂が戻った。
「この空間、進むたびに重力の方向が変わってる。何か“軸”になるものを見つけないと……」
リラが壁に描かれた紋章を見つけた。
「この模様……“逆重力の核”があるわ。たぶんそれを破壊すれば、歪みが解除される」
だが、その“核”がある場所は、この都市の最奥――
つまり、最も重力が狂っているエリアだ。
「だったら、行くしかねぇな」
カイが不敵に笑った。
「“下”に向かって“登る”ってのも、悪くねぇ」
「迷路だらけだけど、リラがいる。任せるよ」
「……行こう」
レイが短く、そう言って先頭に立つ。
第二階層――歪んだ都市の迷宮を抜けるため、
俺たちは、狂った空間の奥へと足を踏み入れた。




