第4章 第17話「尖塔への旅路」
第4章『封印された遺跡』
第17話「尖塔への旅路」
観測者との接触を終えた翌朝。
俺たちは北方――“混沌の尖塔”を目指し、街を発った。
街道は荒れており、ところどころ獣の爪痕や崩れた標識が目に入る。
それでも俺たちは足を止めず、進み続けていた。
「なあ……“J”って、どれくらい強いんだろうな」
カイが小さく呟く。
誰もすぐには答えなかった。答えられなかった。
……けれど、
「少なくとも、俺より強かった。昔は」
俺がそう口にした瞬間、レイが少しだけ顔を上げた。
「ケン……強くなった………出会ったころよりずっとずっと」
「……そうだな」
俺は剣の柄に手を置き、静かに深呼吸する。
かつて“J”は、俺の数歩先を常に進んでいた。
でも今なら、追いつける気がする。追い越せる気さえ――。
道中、小さな村に立ち寄った俺たちは、異様な静けさに気づく。
人の気配がない。
動物の鳴き声も、風の音も。まるで“音”が封じられていた。
「……おかしい」
レイがぽつりと呟く。
「静かすぎる」
村の中央に差し掛かったとき、カイが異変に気づいた。
「おい、あれ……地面、赤いぞ!」
地面には、うっすらとした赤黒い染み。
ただの血ではない――“魔素”が凝縮された、何か。
リラが近寄って手をかざすと、小さく光の術式を展開する。
「これは……浄化魔法じゃ反応しない。……“存在を削る”類の、黒魔法……!」
村人たちは、何者かによって存在ごと“消された”のだ。
声も、姿も、痕跡も。
まるで、“記録すら残させない”何かが、ここを襲った。
「まさか、Jの仕業か……?」
俺の問いに、誰も即答できない。
けれど、俺たちはその異様な空気に、確かな“悪意”を感じ取っていた。
村を後にして、夕暮れ時。
ようやく見えてきた、北の山脈と、その中腹にそびえる“尖塔”。
漆黒の石で造られたその構造物は、空を突き刺すようにそびえ立っていた。
「……あれが、“混沌の尖塔”」
リラが呟く。
「内部には、無数の異空間が交錯しているって聞いた。入ったら、二度と戻れないことも……」
「それでも、行くんだろ?」
カイが剣を構え、俺たちに笑ってみせる。
「行くしかないだろ。止めなきゃ、世界が終わる」
その言葉に、俺とレイ、リラが頷いた。
風が吹く。
その先にあるのは、何層にも重なった“混沌”。
そして、その最奥にいるはずの、もう一人の起動者――《J》。
覚悟は、もうできていた。




