第4章 第16話「もう一人の起動者」
第4章『封印された遺跡』
第16話「もう一人の起動者」
「“この世界を終わらせる者”……って、どういう意味だよ?」
カイが低くうなり、剣に手をかけながら一歩踏み出す。
リラは沈黙したまま、じっと観測者を見つめていた。
レイも隣で小さく眉をひそめる。
観測者は淡々と語り出した。
「“もう一人の起動者”――彼は、君と同じく異世界より来た。コードネームは《J》。かつて君と同じ施設にいた者だ」
「……J?」
俺の脳裏に、一瞬だけよぎった記憶。
それは、同じ部屋で並んで訓練を受けていた少年の姿。
鋭い目つきに、異様な冷静さを持つ少年――確かに、いた。
「《J》は極度に高い適合率を示した存在。だが、ある時点から、完全に人間性を捨てた。“理性”ではなく、“効率”を最優先する存在になった」
「それって……」
「彼は、“この世界が間違っている”と判断した。そして、あらゆる秩序を崩壊させようとしている。……君とは真逆の“起動”を果たした者だ」
沈黙が流れた。
ケンは、目を閉じて小さく息を吐いた。
「……そいつは、今どこに?」
「確かな居場所は不明。ただし……最近、“混沌の尖塔”が起動したという記録がある」
リラがぴくりと反応する。
「“混沌の尖塔”……それって、北方の封印域にある、最も危険な遺構じゃない?」
「正確には、“失われた世界”へと繋がる門だ。Jは、おそらくその先で……何かを始めている」
「……つまり、そいつが完全に動き出す前に、こっちから行って止めるしかないってことか」
俺の声に、誰も反論しなかった。
空気が、明確に“戦い”へと向かっていく。
観測者は最後にこう言った。
「君には選択肢がある。進むか、退くか。だが君が“扉を開けた”以上、物語は動き出した。止まることはない。」
遺跡を出たあと、俺たちはキャンプを張り、夜の火を囲んだ。
誰も多くは語らない。
ただ、レイがぽつりと呟いた。
「……敵、強い」
「そうだな。きっと、今までとは比べ物にならないほどに」
「付いてきてくれるか?レイ・カイ・リラ」
「言わせんなよ」
カイはいつも通りに答える。
レイとリラも無言で頷く。
「最高の仲間だ」
俺は涙ぐんで、決意する。
もう迷わない。
Jと、決着をつける。それが俺の、“起動者”としての責任だ。




